Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.3.15

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎伝」

その2

西村富次郎(獲麟野史) 弘文館 1897

『日本偉人伝』所収

◇禁転載◇

   管理人註
   

平八郎は其年十九にして早く既に大坂町奉行与力と為る、然るに性来大 に読書を好み、之れに前後して学ぶ所あり、然れども当時平八郎の学ふ 所、果して何人に就いて野を講ぜる乎、其事歴暗雲の間に蔽はれて、殆 んど之を知る者なし、唯だ独修精力以て之を学べるものに似たり、平八 郎、大坂町奉行与力吟味役として世に立つや、茲に年あり、吏務の治績 多年の滞獄和歌山、岸和田両領地の紛争の如き一刀両断、之を決し、或 は京師妖巫の逮捕等一々挙示するに遑まあらず、之を要するに平八郎の 断獄裁決するや、素と公正直裁にして、毫も其間に姦曲の心を挟むもの なし、故に其裁決、常に流るゝが如く、毫も阻碍する所なし、彼の和歌 山、岸和田の紛争の如き、素と其正は岸和田にあり、其曲は和歌山にあ り、而しはて和歌山の権家にして、岸和田は然らず、是れ俗吏の容易に 決する能はずして、長く其獄の滞れる所以なり、然るに平八郎は、其正 は之を正とし、其邪は之を邪とす、何の躊躇もなし、是れ其速かに決し たる所以にして平八郎は其胆勇のある所を見るべし、

   


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