Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.6.22

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「大塩の乱関係論文集」目次


『最後のマッチ』(抄)
その1

岡田播陽(1873-1946)

好尚会出版部 1922

◇禁転載◇

自 序

管理人註
  

  いはと                み づ        ひた            か へ 天の窟戸は再び閉された。洪水はヒマラヤ山頂をして居る。鴉復命らず ながなきどり         かんらん わかば ふく   はと 長鳴鳥は鳴かず、橄欖の嫩葉啣みし鴿の姿も見当らない。天地は混沌とし                          とこやみ て人は悉く腐り極つた。ノアの方舟に悲鳴を挙げ、諸神、常闇に泣くさへ     てちかをのかみ     こまね     うずめのみこと            せい あるに、手力男神の手を拱きて、宇受売命の独り狂へるは惨の又惨、悽の            マツチ 又悽ではないか。最後の燐寸は最後のトヾメを刺すの爆薬か。基督の神を    パ ン 以て麺麭を語り、マルクスは麺麭を以て神を説いた。仏の方便は其儘真実、 えき  へんい            そう     りゆうじゆ 易の変易は畢竟不変である。般若を宗とする龍樹の空々は直ちに実在の真    相であり、物理に根ざしたアインシユタインの相対性原理は絶対心理の窮        しふつ しじん   ほふむ                いのち 明では無いか。死仏屍神を火葬る最後の燐寸は墓を蹴つて蘇る生命の火た ること勿論である。即ち是、天地改造の光明、所謂大日霊貴の輝であり尽    む げくわうによらい 十方無礙光如来ではないか。曾ては菩提樹下の聖者を起たしめた暁の明星           うまぶね                 や み と閃き、東方の博士を馬槽に導いた怪星と現れた。或は全否定の深闇を破                   ほ   ほ   な る統一の太陽と燃え、或は舎身供養の火の火と化り、或は精神的迷信たる                   たきゞ             たま 宗教と物質的迷信たる科学を焼尽するの薪ともなるのである。若しくは迷 しひ        か へ   おく 魂を故郷に反正す導り火か。秘かに、密かに、唯一人の真知己に注がんと      かたまり                  た び       し ら ず し ら ず われもまたしらず する鬱憤の熱血か、但しは自葬自爆の懺悔の火か。不知不知我亦不知。  壬戌首於三昧窟 著 者 識















龍樹
インドの僧
 


『最後のマッチ』(抄)目次/その2

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