Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.2

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「大塩の乱関係論文集」目次


『二十三年未来記』
その14

柳窓外史(小柳津親雄)

今古堂書房  1883

◇禁転載◇

○憲法改正の議事  (2)

管理人註
  

此論、着実にして順序を得たるを以て、直ちに多数の賛成を得たり、然れ とも彼の過激党は此等の説を以て迂遠なりとし、交々立て弁を揮ひしかど も、終に勝利を得ずして憲法改正の事を奏問し、上裁を得て、而して後、 改正に従事す可しと決議せり さても憲法改正を請ふの論、朝野ともに交々其是非を評論して、或は不敬 なりと説く頑固論あり、或は迂遠なりと罵る急進論ありて、一時は是が為 に職業を抛棄して騒ぐものあり。斯る時に臨みては、過激粗暴の書生、す わや好き機会に投じたり、此の機失ふ可らずと、或は揚言すらく、此の憲 法を改正する■一日を遅ふすれば、吾党が自由を得る■、亦た一日遅かる 可きなり、此の憲法は吾党参政の自由を得るの尺度にして、改正の遅速は 権利の消長に関す可しと説きて、大に人民を鼓動せり、斯くする中に、国 会に於ては、憲法を改正せん■を請ふの建議を草し、多数の決を得たりし かば、之を元老院に移したり、然るに元老院議員は多くは秩序と進歩との 併行を保つと言ふ主義の論者なりければ、此の決議を再議するに当りて、 建議を不可とする者多く、為に数十日を費して更に決議の模様を見ず、此                       ば り に於て国会院の過激党は大に憤りて、元老院を罵詈し、斯の如くなる元老 院は国家の為に無益にして、有害なり、改正建議と共に元老院を廃するの 議を奏す可しと言ひ、亦た吾国は到底一局議院にあらざれば其効を見ず、 徒らに無神経の華族輩を陳列して、之を上院と名くるも、何の益かあらん、 発会の後、已に数十日を費すも、未だ一事を議了せす、改正建議に対して 遅々すること斯の如し、宜しく此の無用の議員を廃せよ、と喋々論難する に至る。斯ゝる間に元老院は改正建議を不可とするの議決をなして、国会 員の議決を排斥したりけるにぞ、終に両議員の間に一大騒擾を生ずるに至 れり矣




交々
(こもごも)







抛棄
(ほうき)


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