Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.3

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「大塩の乱関係論文集」目次


『二十三年未来記』
その15

柳窓外史(小柳津親雄)

今古堂書房  1883

◇禁転載◇

○憲法改正の議事  (3)

管理人註
  

抑も此の改正建議は、元と過激党が直ちに憲法改正せんとせしを、着実な る議員の、之を制して漸く中庸を得たる議決なれば、元老院に於ては宜し く之を賛成すべき筈なるに、元老院は之を国会員に比すれば、最も着実に して漸次の改進を希望し、勉めて鄭重を主とするにより、国会開設後、未 だ半年にも至らず、憲法実施の日尚ほ浅きに、今日にして改正を望むは、 甚だ穏かならず、責めて二年か三年も実施の後、果して国家に益なしとす るに至て、之が改正を建議すること然る可けれとの論、多数なりしかば、 終に是等の決議をなすに至りしなり、去れとも国会員は此の決議に対して、 大なる不満を抱くのみならず、元老院にして之を不可とせば、直ちに天皇                       じきさう に建議して制裁を仰がんとの議論出で、いよ/\直奏せんとするの勢に傾 きけるにぞ、元老院は之を拒み、国会員の決議を直ちに上裁を仰ぐは、憲 法の許さゞる所なり、憲法に反対したる決議は、公権を以てしたるものに あらずと難じ、力を極めて駁撃すれば、国会員も亦勢ひ避易す可らず、大                                つまり に元老院を罵りて、先つのを廃せよと言ふに至らん。斯の如き騒擾は到底 議論の極端に走るより生ずる所なりと雖も、勢ひ亦た止むを得ざるに出でゝ、 如何ともする能はざるなり、然るに内閣は此場合に至りて、傍観する能 はずして、終に両院の間に立て、調和を計らざるを得ざるが如き事情を生 ず可し。調和容易に成る可らず、国会員が元老院との不和は、全く枝葉に して、国会員の精神は憲法の改正にあれば、何かな一議論して目的を達せ んとするの場合に臨みて、此紛議を得、之を機会として目的を達するの手 段に及はんとし、内閣が調和を計らんとするを見て、いよ/\心中喜び、 内閣にして、若しも憲法と改正するに同意せは、両議員の調和をなさん との意を陰然示すに至らん。然るに万一上下両議員の論改正建議に同意す るに及んで、内閣独り之に不同意ならんには、内閣は或は解散せざるを得 ざるの勢ひに至らん乎、若しも内閣を解散し、更に新内閣を組織するに及                     くわい んでは、急進党の喜ぶ所にして、此党は拍手快を呼ぶに至る可れども、如 此は多少の騒擾を見ざるを得ざる場合ある可しと察せらる偖ても両院の紛 議は、いよ/\結んで解けず、国会院は此の建議を採用せられざる間は、 政府より下附の原案を議す可らんと言ふ者あり、殆んど激論に渉りけれは、 内閣も亦た勢ひ打捨て置き難しとて、寧ろ国会を解散せよと言ふ論起り、 之が為め愈々急進党憤慨して、余が(第四章)述べたるが如き改革をなさ んと欲するに至る可し、此に至ては国家亦た将に至難の極に達するものと 言ふ可し






























避易
(へきえき)
辟易

 


『二十三年未来記』目次/その14/その16

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