Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.9.26

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「大塩の乱関係論文集」目次


『二十三年未来記』
その8

柳窓外史(小柳津親雄)

今古堂書房  1883

◇禁転載◇

○第三 憲法の事

管理人註
  

                     ようゐ さて是より未来の事を談す可し、第一に政府の準備を予言せんに、伊藤参 議帰朝の上は、政府の御見込も一層着実となりて、秩序と進歩の併行と行          そぼう           はうかぶ ふ御廟議と相成り、麁暴過激の青書生等が、蛙の頬被り、向ふの見へぬ政 治論を唱へて、愚民を煽動するをば、厳重に御取締りに相成り、政談家の 生兵法が、動もすれば国家の安寧を妨げるをば、是又厳しく御取糺に相成 る、右等の為めに警務省を置きて、司法警察の事務を大に拡張せられ、世 の中には謹慎着実の談家をのみとなりて、一ケ年中、一度も中止解散の風 聞なき様に至りて、初て政府は欽定憲法を発せらるゝならん、欽定憲法て は不承知なり、国約にあらざれば服従し難し抔と唱ふる者あるときは、是 れ国安に害をなす不届者なれば、夫々厳重の御処分あるならん、而して 其の欽定憲法は、いかなる大意なりやを推察するに、凡そ左の如き大意を 以てせらるゝに至る可しと憶測するなり  (皇 権) 天皇は聖神なり、犯す可らず、政務の責は内閣連帯して之     に当る     行政の大権は天皇に属す     司法の大権は天皇に属す、法律に従ひ、裁判官をして審判せしむ     天皇は陸海軍を統率し玉ふ。外国に対し宣戦講和をなし玉ふ事。     条約を結び玉ふ。有功を賞し。罪犯を宥免し玉ふ事     天皇は国憲を制定し、之を改正し玉ふ事。国会議院を開閉し、中     止し、又た国会院を解散するの特権を有し玉ふ     天皇は内閣参議を置き、万機の政を任じ玉ふ事  (内 閣) 内閣は参議何名を以て之を組織す     内閣参議は各省長を兼任する事     内閣宰相は協同して内外の政務を掌り、連帯して其責に任する     内閣に首相一人を置き、政令は其名を以て之を行ふ     内閣の議決せざるものは、首相より上裁を仰く     内閣の歳出入予算は内閣之を起草する     内閣より出す所の議は、国会院の議決を得、之を元老院の議に附     し、更に議決を得可き     内閣は毎歳の歳出入決算、及び内外政務施行の要請を国会元老両     院に報告する     内閣の意見、両議院の議と相合せざるときは、天皇の上裁により     て決する  (元老院) 元老院は左の資格の者より成る     特撰議員は皇族、華族、及び勅奏任官にありて勤功ありし者、并     に学識ある者     公撰議員は元老院議員撰挙区より各一人を撰挙す     各州を以て元老院議員撰挙区とす     年齢三十歳以上にして国会議員被撰権を有する者に限る可し  (国会院)国会議院撰挙区は各府県を以て一区若くは数区に分ち、人口     十万人毎に一人の割を以て公撰す、十万に満さる区は除く     人口三万人以上の都市は別に一撰挙区となす     国会議員撰挙人は、地租十円以上を納む可き土地を有し、価金四     百円以上の家屋に住居し、満廿五歳以上に達したる者たる可し     (此に処刑中の者、政権剥奪せられし者、白痴、風癲、官吏等を     除く)     国会議員被撰候補は、年齢三十歳以上にして、地租三十円以上を     納む可き土地を有し、五百円以上の家屋に住居し(此に前の如く     云々を加ふ)たる者に限る可し 先つ大凡こんな大意なる可し、余の精神を以てすれば、此の憲法には頗る 意見あれと、今日の有様より推せば、まづ/\此位の憲法なりと覚悟せざ る可らず、政府にては飽までも鄭重着実を主とせらるゝを以て、漸次に改 正を加ふるとも、当分は此れ位の憲法ならでは、躁進の患ある可しと懸念 せらるゝならん、是も亦致方なき今日の場合なる可き乎











動(やや)も
 


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