Я[大塩の乱 資料館]Я
2018.3.30

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『飢饉資料』(抄) その103

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第四章 飢饉の私的対策
 第一 代用食
   (一)食用草木(備荒録 五四頁以下)
     三 食用草木
      附海産食物

管理人註
  

       海産粮之食物  海浜の人は海産を以て救荒に備へたるもの、古へより往々之あり、殊に漁 人の如きは、田畑を多く有せず、朝に釣り、夕に鬻ぎ、日々の生計を営むも の多ければ、常に余裕も少く、況して凶荒に際すれば、農夫より其困難一層 甚しかるべし、故に平常心を用て多少の貯蓄をなし、以て飢餓を免ること勉 むべし、  凶荒には草根葉実も人皆採て糧食になし、自然乏しく、宜しく海産物を採 て救荒に供すへし、殊に此産物は貯蔵久しきに耐へ、且慈養品なれば、其功 草根木実の比にあらず、左に其種類の大略を挙ぐ、             アラメ  藻苔類 昆布、裾帯菜、裙帯、石花菜、恵期草、菜、袋海苔、鹿角菜、      海羅、神馬草、雪海苔、索菜   右之類能く塩気を去り、充分に乾燥し、苞に収め貯へ置く時は、虫付な  く、久く耐ゆ、之を糧食とするには、よく粉にして米麦雑穀他澱粉質を有  する馬鈴薯、或は甘藷、蕨粉等に和して炊き、団子に製し食すべし、又瓊  脂を製して食すべし、是等は大に飢を凌ぐもの也、現に佐渡国海布浦の漁  民は此海馬藻を粉末として糧食せりと救荒要録云へり、  右の親は多く産するものにして、且製造するにも易く、又久しく貯蔵し得 らるゝ故に、常に貯へ置くを宜とす、其他魚介に限らず、多く漁撈して塩 乾し得るものは貯蓄すへし、是等の魚介は一粒の穀類なきも、食して飢を 凌ぐべし、已に蝦夷土人の如きは、往古より鮭鯡の乾物のみを食物として生 活せしなり、又下総の瀬海には、蛤仔若くはを採て扶食の半を助ることあ り、其他風時の難に遭へる水夫の如きは、或は鰹節を噛て一週日も洋中に 露命を繋ぎともの往往あり、殊に魚介の乾物は小量を食して久しく飢を凌く に堪へねものなれば、実に救荒の要品たるべし、又救荒便覧に兵粮丸方と題 し、魚介を以て調和する方あり、左に掲げて参考とす、   晒米十五匁 蕎麦粉五匁 勝尾武士三十匁 饅驪皐三十匁 梅干肉三十   匁 生松甘肌三十匁 以上酒に蒸し、右の薬粉にて梅干肉に松の甘肌段々に入れ、能く押合す、径 三分余に丸して、一日二三粒宛用ゆ、七八日の飢を凌ぐ、   又、方干鮑二十匁 大麦十匁 鯉三十匁 餅米五十匁 茯苓十匁大白上   海鼠三十匁 右粉にて丸し、朝夕一粒つゝ用ゆ、常に遠行食心之なき処へは持つへし、  又方田螺を生醤油にて煮て干すなり、十ばかり懐中すへし、夫を噛み喉か わくに湯を呑めば食になる、又串海鼠を醤油にて煮食すれば、廿四時保つと あり、

   
 


『飢饉資料』(抄)目次/その102/その104

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