し しらがし 殻斗科 麪
材質藍白なり、通常 は世人熟知の樹なり、但「はうばがし」「うらし
ろがし」「くつばねがし」等葉形一ならず、随ひて其実の形も小異あり、
此実味、多少苦渋なれども通して食用しなすへし、山民搗きて水に浸し、
屡々水を換へ苦渋を去り、煮て米粉を和し となして食ふ、「かしもち」
又濃州にては「かしだんご」といふ、
しゐのみ  科 椎子
是亦 の類にして、実は山果の中にて、其味五穀に近きこと栗実に亜げ
り、炙りて食す、又搗きて米麦の粉に加へ 餌として食す、
ひ ひし 柳葉菜科 実
池沢に生ず、形状は通常熟知の品にして其実三四角、又両角あり、十月
熟か?
頃に熱す、採りて生食し、或は蒸食するもよし、味甘淡にして香し、其茎
は嫩きを採り、曝し、収めて米麦に和し、飯に炊き食す、漢土にては荒歳
飢民 を以て飯に代へ、食ふとあり、伏見其他肥前越前にても多く此実を
きて途上に ぐものあり、
せ せんにんにく 科 老鎗穀 ひもげいとう(東京) せんにから、
ゑんこうげいとう、からごま(会津)
元と琉球種にして文化十二年、諸国に伝播す、春下種して生す、高三四
尺、葉形 に似て淡緑色互生す、茎上に長穂をなし、一二尺下垂す、深紅
色の細花多く攅簇し、後細粒の実を結ぶ、其熟したるものをとりて之を炊
れば、白粒露出す、之を罌栗の如く諸菜に撒け食へば香気あり、此実又粥
となし、或は搗きて餐となすに味頗る佳也、又蔬となし食す、
附言 以上効用は土地の厚薄により差異あり、又糧の製法麁にして脾胃を損
し、浮腫の病に罹り、或は吐瀉して糧の悪敷を云ふて、製法の麁略なるを
云はずして再び其糧を食せざるに至らん、依て平素草根木葉を採り、種々
に製法調和を加へ、試食をなし置くこと肝要也、
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