Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.4.26

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎」
その12
芝 松南

『忠魂義胆 武道の誉』精華堂 1910 所収

◇禁転載◇

大塩平八郎(下)功名栄利誰論ぜん (7)管理人註
   

平『アゝ惜い男を殺さにやならぬ、誰れかある、宇津木を血祭にいたせ。       ばしよく       さげ    きた 節『孔明泣て馬稷を斬る、ハツと答へて十文字の槍ひつ提て、来るは大  井正一ぢや。                         詞『矩之允は厠を出て、手洗鉢の柄杓に水を汲んで恁う手を洗はうとし  て居る。 正『先生の仰せでござる。 節『繰り出す槍先ジロリとながめ、「暫らくお待下されよ」云ひつゝ手                          くつろげ  を洗ひ、髪の毛撫てドツカと坐り「イザお突下され」胸寛て従容と、  せか          つぶ  急が騒がず眼を瞑る。      てむかひ 詞『少しは抵抗でもするか、抵抗せん迄も議論家の宇津木の事であるか                          ようす  ら理屈の一つや二つ位はコね廻すかと思ひの外、案外態度のあまり立  派過ぎるので、勇気も挫けて折角の突つけた槍先に困つた。 宇『大井氏、御遠慮には及ばぬ、お突なされ、矩之丞素より覚悟でござ  る。 節『一揺膝を進むればこれに、気を得て正一が、御免と突出す槍先は、  紫電一閃一呼吸、胸元見かけてブツリ……。穂先は白く背に出で、花       ます ら お  とちりにし益良雄が、心の色のかんばしく、死しては護国の鬼となる、  大塩此の体打眺め、アゝ一将は得難く万卒は、得易き道理はあるなれ  ど、大事のためには換られぬ、一たび下す号令に、壮士をごらず、馬 いなゝく きか  嘶かず、麾下三千の旗風は、みだれずそらになびくなり、時是れ天保                     あかつき  八年の、二月十九日の寅の刻、七ツ六ツ時暁天の、夢驚かす鬨の声、       くだ  天柱此処に摧けるか、地軸は此処に裂るかと、怪しむばかりの砲の音、                ちまた  百雷一時に落ちかゝり、浪花の巷衢は時の間に、打つ打れつ阿毘叫喚、             かばね  血汐は流れて河をなし、屍は積んで山を為す、火の手は諸所に揚げら  れて、修羅の巷と変りける。 詞『茲を先途と戦ひましたが衆寡敵せず、大塩方は勇将安田図書が戦死  してからは、意気沮喪、次第/\に斬り崩されて来る、旗色は乱れて       ありさま                      あきら  来る、この頽勢を見て取つた平八郎は、大事一擲、モウ是れ迄と断念  めて解散の命令を伝へた。                   すゐ 節『さしもに猛き大塩勢、時に利あらず推ゆゆかず、戦ひ敗れて落人の、  行衛も浪の跡絶へて、散り/\パツト磯千鳥。





大井正一
大井正一郎















































戦死したのは
安田図書
ではなく
梅田源左衛門
安田は捕縛


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