Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.4.22

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎」
その8
芝 松南

『忠魂義胆 武道の誉』精華堂 1910 所収

◇禁転載◇

大塩平八郎(下)功名栄利誰論ぜん (3)管理人註
   

        (二)            まつり 詞『四月十日は東照宮の祭日でございまして、城代土井大炊頭利位を初  め東西町奉行跡部山城守良弼、堀伊賀守利堅は建国寺へ参詣する日で                               みな  ございますから、此の時を埃つて不意を襲ひ、俗吏の巨魁を一挙に鏖 ごろし       かねぐら こめぐら  殺にして、金庫や米庫を開いて窮民に与ふる計画であつた、が同志の  うちに平山助次郎に吉見九郎左衛門と云ふ臆病未練な奴があつて、一          おそ  旦は大塩の決心に懼れて賛成したものゝ、決してソンな勇気のある奴  ぢやない。 平『吉見氏、貴殿は今度の一件に就ての覚悟は如何に決められた。 吉『サア…… 其の事で心配いたして居る。               たとへ 平『拙者も心配いたして居る、仮令先生のお見込み通りに参つた所で、  天下の大兵を引受ては中々難儀でござるテ。    さ う       まみ    あかつき 吉『左様ぢや、一敗地に塗れた暁天はお互に三尺高い木の上で、   しにはじ            こじき         ほめて 節『死耻曝すは判つて居る、言はゞ乞丐の断食同然、誰れも褒人はござ  るまい、命あつての物種ぢや、何かよい智恵あるまいか。                        わざはひ 平『左様、命あつての物種ぢや、今のうち密告して禍災を逃れて一身の  安全を図るが当世ではござるまいか。 吉『いかにも、それはヨイ処へお気が付いた、善は急げと申す儀もござ  れば、只今より密告いたさうか。              さゝや      うなづ        のう 節『其の手筈はかう/\と、耳語く平山点頭く吉見、喃と耳へ吹き込め    うん  ば、呟と胸に呑込んで。 詞『東町奉行跡部山城守へ密訴いたしたは、二月十八日の丑満時、当今  の午前二時でございます、山城守は寝て居りましたが平山、吉見が密           びつくり  訴の顛末を聞いて、吃驚仰天。

   


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