Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.4.11

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「大塩の乱関係論文集」目次


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』

その115

相馬由也

開発社 1919

◇禁転載◇

十六、叛逆か大不敬か (3) 管理人註
   

  こ ん  此様な話もある次第である。されば平八郎の密書の内容は、烈公の自 ら久しく思ひ煩へる所と吻合した点が多かつた事を想像し得べく、それ かあらぬか、翌天保九年八月に、烈公は遂に思ひ迫つて、縷々一万六千 余言の長文の建議をされるに至つたが、其中には平八郎の檄文の内容と 相対照すべき妙味ある事実を多量に含んで居る、即ち其内憂に対する方   うち                      ふさが 策の中には、『第一上下り離隔は古今の痛弊なり、言路塞りて、上書建 白の道絶ゆれば、自ら有司と君主との間も疎くなり、奥向の婦人権を弄 するに至り、諸役人はいづれも賄賂を婦女に納れて、立身を図らんとす、 今や太平久しく打続きて、頗る其弊に堪へざるものなれば、大に言路を 洞開し、老中以下諸役人を台前に召して、評議を尽さしめ、以て宮女の 権を抑へざるべからず、且つ大名旗本中より、人才を抜擢して有司に任      まつりごと じ、刷新の 政 を布く事肝要なり、第二、治に居て乱を忘れず、奢侈を 止め、士気を一新し(下略)、第三、農は国の基なれば、代官を選び、                               かみ 農民を督して其業を励ましめ、公料の年貢を財政の基礎と定めて、上の 御手先をはじめ、奥向其他の費用を節し、且つ悪貨を改鋳して、物価の        こくど 騰貴を防がば、国帑の不足はあらざるべし、第五、諸役人等町人に党し、 賄賂によりて不正を行ふが故に、幕府の費用亦随つて増加す、宜しく之                         ほうぎよ を禁ずべし云々』とある。老中水野越前守が家斉将軍薨去の後に於て、 断然一大改革に着手したのは、此烈公の建言の力多きに居るといふが、                              いきほひ 然らば平八郎の密書の内容と、而して彼の挙兵の刺激とが、又此勢を激             あなが 成せしめて力あつた事を、強ちに否定は出来ぬであらう。














言路
上の者に対し
て、臣下が意
見を述べるた
めのみち


洞開
あけ放つこと


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』目次/その114/その116

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