Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.2.20

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「大塩の乱関係論文集」目次


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』

その82

相馬由也

開発社 1919

◇禁転載◇

十一、其死生観 (1) 管理人註
   

 唯茲に彼の実行と照し合す上から、研究の必要あるものは、其死生観 である。「生とは何ぞや」、「死とは何ぞや」といふ問答は、吾人の日       きつきん 常生活に最も吃緊なもので、真面目に考へれば、一起居一動作の間にも                なにゆゑ      おびやか 此問題解決の必要はある。飢餓が何故に怖いか、死が脅すからである。 病気が何故に怖いか、死が脅すからである。戦争が何故に怖いか、死が 脅すからである。喧嘩が何故に怖いか、死が脅すからである。強盗が何 故に怖いか、死が脅すからである。天災地変が何故に怖いか、死が脅す                   ゆゑん からである。何故か、事に処して自ら其所以を解せずとするも、深く省 察して、極処に至るならば、常に其奥底には死の問題が巨眼を輝して控               やゝ え居るに相違なく、其為に人は輙もすれば節義を失ひ、廉恥を忘れ了る のである。されば吾人にして苟も天地の間に樹立し行かんとするならば、 先づ此問題から解決し置かなければならぬ。されば陽明は「学問功夫、 一切声利の嗜好に於て、倶に能く脱落し、殆ど尽すも、尚ほ一種生死の       けたい       すなは 念頭、毫髪の掛帯有らば、便ち全体に於て未だ融解せざる処有らん。人            も  せいしんめいこん は生死の念頭に於て、本と生身命根の上より帯び来る。故に去り易から     このところ                    まさ ず、若し此処に於て見破り、透して過ぎなば、此心全体、方に是れ流行 さは 礙り無し。方に是れ性を尽し、命に至るの学なり」といつて居るが、誠 に尤の次第だ。





吃緊
差し迫って
重要なこと




















声利
名声と利益

毫髪
ごくわずか
なこと

命根
いのちのもと



『伝習録』巻下


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