Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.3.1

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「大塩の乱関係論文集」目次


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』

その91

相馬由也

開発社 1919

◇禁転載◇

十二、天保七年の飢饉と大阪 (6) 管理人註
   

 何故今少し骨を折つて彼等富商に寄捨させぬか、何故富商等も自ら進                          ほしいまゝ んで寄捨をせぬか、窮民飢餓に泣く一方に、彼等は驕奢を恣にし、揚屋 遊び、茶屋遊びに人目を憚らずに居る。彼等の中には、十人両替となつ て三郷全体の両替屋を取締るもあれば、御用融通方になつて官金を預る 者もある。是等の職に居るものは、公儀から名字帯刀御免になつた上に、 諸役免除の特典をも受ける。又彼等の中には前に話した諸藩の蔵元にな                        ぎんしゆ つて米穀其他の貨物を取扱ふのもあれば、又掛屋(銀主ともいひ、大名 に金を貸す者)を営み、一方に蔵物販売の代金を受取り、一方に之を各                          か う 藩の国元、並に江戸屋敷に仕送る等の仕事を取扱ふ。斯様した蔵元若し くは掛屋といふ様な蔵屋敷関係の者は、金談のある毎に、必ず蔵役人と 共に相携へて、馴染の揚屋、又は茶屋に入り、其処で一切の用談を遂げ、             はべ        ふ ざ け それから放歌乱舞、美人を侍らせて、巫山蹴散らすが常であつた。守貞 遺稿を見るに、銀主は元金に対して月利をキチンと取る上に、関係ある 藩より禄米、日俸等を受け、手代迄が手代扶持を受くるもの多く、各藩 に依つては其銀主を臣下並にし、用人格などといふ者もあり、又紋服及  かみしも      の し め、或は熨斗目の服、肩衣、羽織等を拝領といつて与へ、其他種々 国産等を賜へば、銀主よりも、毎時上物をし、臣僚へも音信、音物等を しば/\ 屡次す。蔵屋敷留守居役は、正月は長棒、乗物に乗り、引馬を曳かせ、 数十人の供を連れ、銀主に新正の祝を述べ廻る。銀主の家に葬式の有る 時にも、亦留守居役は駕籠に乗り、鎗を立てゝ之を送るといふ様に書い てある。阿弥陀は金で光るとやら、何時の世にも金権の勢力といふ者は 素晴らしいものでないか。























守貞遺稿
『守貞謾稿』
喜田川守貞著











長棒
「長棒駕籠」の
略、かつぎ棒が
長く、数人でか
つぐ上等の駕籠

新正
(しんせい)
新年の正月


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』目次/その90/その92

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