石原干城（出版）兎屋誠（発兌） 1885
◇禁転載◇
適宜、読点を入れ、改行しています。
| ○御裁判之事 (１) |
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天保戌九年八月廿一日、徒党之者共御仕置之儀、老中松平和泉守殿御懸御調有之、寺社奉行牧野備前守殿、御勘定奉行深谷遠江守殿、町奉行筒井伊賀守殿御懸、御裁許左の通り、
○大坂町奉行跡部山城守組同心、吉見九郎右衛門（酉四十七）儀、組風旧弊奉行の存寄を以て改革等可致ハ素よりの儀有之処、組内未熟にて我意申募、風俗にかゝわる者共ハ組替申付可有之抔風説承、歎敷存、且ハ同組の者共取計をも疑惑致折ﾈ、兼て学問並勤向をも教示受、随分能有候、大塩平八郎奸舌に惑、弥心得違存迫り、其上平八郎儀、近来違作相続、諸民及難渋、一体政事向に付、同人存意に不応儀ハ間々有之を憂る心難堪間、大義を唱へ、往々王道に帰す様致度、就てハ計策を以て奉行を討取、城を始め諸役所并市中をも焼払、豪家の貯金等窮民に分遣し、一旦摂州甲山へ可楯籠心底之旨平八郎申聞、近国御告為知候積の檄文読聞せ、右書中にハ此上も無恐多文言等も認有之候を、不容易儀と乍心附致、徹心事も有之候迚、右の企に一味連判致始末、重々不届至極に付、引廻の上於大坂磔可申付所、対 公儀恐入、賊徒発起以前、右謀計の次第悴吉見英太郎を密訴に及候に付、御仕置御宥免の上、取来候高其儘被下候、譜代に被成下、小普請入被仰付之、
○吉見九郎右衛門 悴吉見英太郎 ○河合善太夫孫 河合八十五郎 儀同組与力大塩格之助父平八郎方へ寄宿中同人不容易致企格之助大砲丁打に糺し、棒火矢等拵立候儀とハ、銘々親共其外平八郎門弟一同、右手伝致候内、同人儀御政道を致批判、其上民を弔大義存立候趣、対 公儀恐多事共認載摺立、殊に旗袖印等仕立、右門弟共折々打寄密談に及様子及見聞、怪(性？)敷儀と心付上ハ、素より一味と察候者の名前へ相分、右檄文之趣意も覚居候儀に付、速に密訴可致処、右体不容易と銘々父の内存探罷在及遅々候始末、不届なれ共一味に不加、平八郎門弟共外出を厳重に差留有之を、彼是致手段、密に塾中忍出、八十五郎父河合郷右衛門始一味の者共名前認候書付、吉見九郎右衛門より請取、同人任申含、右企発起以前致注進候に付、為御褒美銀五十枚宛彼下候、
但八十五郎儀ハ、跡部山城守家来へ引渡遣す、
○御弓奉行上田五兵衛組同心、竹上万太郎（酉四十七）儀、大坂町奉行与力大塩格之助養父大塩平八郎逆意を企候にハ不心付候得共、違作の年ﾈ諸民及難渋に付、救民計議と称へ、奉行を討取、大坂御城を始め諸役所并市中をも焼払、富家之貯金等窮民へ分遣候由を以、右企一味の儀申勧候節、民を為救に仕成儀ハ不筋にも有之間敷存、同意の上盟文へ血判致、其上御政道を批判、又ハ此上もなき恐多文言等相認有之檄文をも及一覧、中には徹心の儀も有之、迚、弥々右企発起の手続申合、当朝に至、所持の鉄砲持参、平八郎宅へ罷越候所、内変出来、狼狽候様子に見受、事成就無覚束、徒党を可遁と其場を迯去候段、不恐公儀の仕方、右始末重々不届至極に付、引廻しの上於大坂磔申付、
○跡部山城守組与力、大西与五郎儀、大塩平八郎不容易致候儀ハ不存共、同人養子格之助当組内奸智之者共及増長、御為不宜間征伐可致積に付、其方存意承度平八郎口上の趣、格之助申聞候節、不同意の段及挨拶、猶同人へも申諭、平八郎へ及異見候程の儀に有之上ハ、其後の様子篤と可相糺処等閑に打過候、殊に同人大筒等打払、放火及乱妨候次第承、近親の儀、殊頭跡部山城守より取鎮の儀差図受候上ハ、身命を抛ち、制方も可有之所、病中とハ乍申、大筒の音相響、火勢盛に相成、平八郎方へ難近寄、素より同人異見等可取用生質に無之、無詮議と存候迚、養子善之進のみ差遣、其方ハ不相越、其上右騒動ハ兼て格之助より承企と心得候得共、法外の所業、親族の罪科難遁、其場に乍在差留方不行届候てハ不相済儀と心付、善之進の介抱受、一旦摂州西宮迄立退、其上心得違の段、相弁途中不見咎様為可致刀海中へ投捨致、帰坂之段御扶持方被下の身分に有之候間敷仕方、右始末不届に付、遠島申付候、
○同人悴大西善之進儀、従弟大塩平八郎、不容易致企右発起の後に至り、与五郎頭跡部山城守より平八郎取鎮の儀、同組与力を以差図有之候節、与五郎ハは病中に付、同人而已は無覚束存候に付、附添可罷越旨右与力へ申達候程の儀に有上は、素より親族の儀ﾈ身命を抛ち取鎮可申付、与五郎に先立、平八郎宅近辺迄駈付候得共、火勢盛に燃上り、殊に鎗刀を携候者多、人数往来を差塞、容易に平八郎に対面難相成迚立戻り、其上与五郎申に任せ、一応も不申諌、同人に付添一旦遠方へ立退候始末、不埓に付押込可申付処、依父之科中追放申付候
但し御構場所徘徊致間敷候、