Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.9.6

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩中斎空虚の哲理』

その15

高田集蔵

立正屋書房 1925

◇禁転載◇

二 哲学的思索
 (其二)(4)
管理人註
   

 自然の心の空虚を四季の変遷して跡を止めざるによつて学ぶのは面白 いことであります。例によつて老子を引照致しませう。     謙 退  物を生ずるの功成りて  春の光栄を得るや直ちに  春は退きて夏にゆづる。    をさ  物を歛むるの業成りて  秋の名遂ぐれば、ためらはで  秋は隠れて冬にゆづる。  かく天道は万物を利するのみ  利して退くに速かなる  謙虚の心ゆかしからずや  人心また本来空虚であつて、仁義礼智の道念の働きはあたかも四季の 循環の如くに自然なりと申しますのは、心既に太虚に帰して居る聖人の 上に於てのみ之を見るべく、名利の俗念に囚はるゝ常人に在つては遽に 然るを得ずとして之れを貶するのであります。しかし猶名利の俗念に囚 はるゝの常人と雖も巧利的に仁義礼智の道に従はんとし、或は矯偽是れ 事とする者があります。中斎先生は此等の徒輩を郷愿として黜け、覇者 の奴隷として賤しめて居られます。而して老子旡為の流を汲んで仁義の 有為を嘲つた荘子は、決して聖人の虚心おのづからにして仁義たるもの を嘲つたのではなく、私心ありて仁義を矯飾するの偽善者に対する反感 から斯く曰つたのだとして、寧ろ荘子の為めに弁護してゐられるのであ ります。




































(にわか)に


郷愿
(きょうげん)
道徳家を装って
郷里の評判を得
ようとする俗物

(しりぞ)け

旡為(きい)


『大塩中斎空虚の哲理』目次/その14/その16

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