Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.8.28

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩中斎空虚の哲理』

その6

高田集蔵

立正屋書房 1925

◇禁転載◇

一 科学的考察(4)管理人註
   

 ところが私の空虚中心説は、之を詳しく述べると科学の範囲を逸脱し て宗教的黙示の学に通入し、寧ろ空虚哲学全体の総結を成すものであり ますから、今はたゞ太陽系に関する二三の要点を挙ぐるに止め、それも 諸君の御取捨に一任することゝ致します。  (一)、熱が圧力に関係あることは物理学上の定説でありますが、地   球内部の熱は、その外殻たる大地の重量に負ふところは無いでせう   か。而して極度の熱は物質を気化し、圧力の焼点たるその中心に至   つては殆んど真空を成すものではないでせうか。  (二)、地球に就いての此の臆説は、勿論直ちに個体としての太陽に   も適用せらるべきものでありますが、 Solar vortex と云つて太陽   系全体が渦巻の運動をしてゐて、漸次に収縮してゐるらしく。所謂   宇宙的圧力(Universal pressure)なるものも、つまりこの旋回運   動の結果に外ならぬやうであります。而して圧力は渦巻それ自身の   運動と密度とに比例して増加するから、渦巻きの中心たる太陽の受   くる圧力と、為めに生ずる熱量は非常なもので、遍く八紘を照らす   あの大光明も、実は遠大なる外界から受けてゐる圧力が熱化し光化   して反射されてゐるものと見ることは出来ますまいか。  (三)、そこで太陽系の中心としての太陽は、逆理的な言ひ方ですが、   私の所謂空虚そのものゝ具体化と謂つてよいと存します。空虚を体   とすればこそ、その相用たる光と熱とに永劫減量がないのでありま   せう。更に、斯う申しましては聊か独断の嫌はありますが、太陽系   全体の行ふ旋回運動の秘密は、中心たる太陽がその内部に有する空   虚に存するのであります。この空虚こそ神秘中の大神秘で、宇宙の   謎は実にこの中に秘められてゐると申しても宜いと存じます。それ   は物質の現在、過去、未来に渉る、あまりに大きな問題であります   から、別の機会に於ける講究に譲ることゝ致しませう。  兎に角以上略説したところに由りまして、物理的、生理的及び自然的 の一切動的なる現象の背後に空虚の存して、その活動を促してゐること だけは御得心下さることであらうと存じます。  生理的たる人体は、古人も之を小天地と呼びました様に、天地宇宙の 縮図とも云ふべきものであり、随つて能く人体生理の玄奥を叩いたなら ば、それがそのまゝ天地生成の原理と不二なるものであることは申すま でもありません。而して人為人工の物理的現象と雖も、亦同一原理の適 用に外ならずして、これら三種の現象は畢竟して同一の法則の下に運用 されてゐるのであります。而してその原理の中心、法則の本源を成すも のは、見えざるの空虚であること、今更申すまでもありますまい。
























vortex
渦巻き



















































玄奥
(げんおう)
奥深くては
かり知れな
いさま


畢竟
要するに


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