識見
其一 卑名利
ハ ナレバ ク テ ク ヲ レハ ナラ
中斎曰く、「功名富貴錦覈陥也。心虚則能見以避之。不虚
テ シテ エ テ スル カラ
則視而不見。踏而死者不少矣。鳴呼。虚哉虚哉」。と、又曰
ハ タ レ スルノミ ソ ヲ レ ン
く、「丈夫之業聖賢惟是期耳。何富貴利禄之羨」。と、利の為
めに屈せす、欲の為めに熱せす、徹頭徹尾、虚心平気たらん者、
必す大事業に当るに足らん。若し功名富貴の為めに事を謀らば、
是れ実にに陥る者なり、中斎が蹶起して聖賢の業に従事して、
利禄を羨望せざりしは、丈夫の所為と謂つべし。
|