Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.8.19

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「大塩の乱関係論文集」目次


医学上より観たる大塩中斎

その6

田中香涯

『現代社会の種々相』日本精神医学会 1924 所収

◇禁転載◇

医学上より観たる大塩中斎(6)管理人註
   

 大塩中斎の言行を観るに、殆ど上記の事項に適合してゐる。彼は陽明 学者であり、且つ詩文の才に長じてゐながら、数に関する観念に乏しく、 自身の父母の命日を間違へたり、甚だしきはその職を辞した年月をも取 違へたりするやうな迂闊極まることをしてゐる。そして自ら負ふ所甚だ 高く、天下の学者にして乃公に及ぶもの一人もなしといはん許りに傲り、 その上官をも蔑視して、内心屁とも思はず、非常な疳癪持で、些細なこ とにも激怒し、法廷で罪人を乱打し、家塾に於て門人を鞭打したりする ことは度々であつた。そして門人に対しては非常に品行の点をやかまし く戒め、若し飲酒登楼でもする者があつたならば、直ちに鞭打の厳罰に 処した程なるにも拘はらず、自身は賤しい娼家の娘を妾にして之と同棲 し、甚だしきは養子の妻に貰つた少女を姦した。(但しこれは風評なれ ども、火のなき所には煙は上らず)此の如く閨門が治まらないのに、陽 明学者然たる偉さうな顔をして知行の合一を説き、また常に世を罵つて 『口癖のやうに御政道向き、其他御役人等』を種々嘲り批判した。これ は畢竟官に厚遇せられずして、自己の慾望を充たすことが出来なかつた 例の不平より起つたことである。またその暴挙に就いても、彼は救民を 標榜して立つたけれども、その実は、自己の仇視する富豪官吏を倒して 不平鬱憤を晴らすが目的であつた。彼が事を挙げる前、蔵書を売り払つ て得た金を悉く窮民に分与したのは、いかにも慈善家らしく見えるが、 しかし、之を分与する際若し之を感謝する心があるならば、天満に火の 手の揚つた時、早速駆けつけよといひ聞かせたのを見ると、真に慈善心 から起つたのではなく、暴挙のために人数を呼び集める準備的手段に出 たことが推知し得られる。










乃公
(だいこう)
尊大に自分を
さしていう語














『塩逆述』
巻之五
その8


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