Я[大塩の乱 資料館]Я
2018.5.10

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「大塩の乱関係論文集」目次


なにはいぶん  しほの なごり
「浪華異聞 大潮余談」
 その4
宇田川文海 (1848−1930)

『絵入人情 美也子新誌 第2号』所収 駸々堂 1882.4

◇禁転載◇

 第2回 (2)管理人註
  

ソモ大塩殿の初の計畧ハ、今度西の御奉行堀伊賀守殿の着坂されしに付き、東の 御奉行跡部山城守殿同道にて、今日組与力同心の屋敷町を巡見され、同役朝岡氏 やしき                               おんしるし の邸に立寄て休息あるを幸ひ、不意に起ツて之を襲ひ、押取込て御両所の御首級                            かねぐら を揚げ、其勢ひに乗じて御城に責寄せ、矢庭に之を乗取て、金庫米倉の扉を開き、 おもひ          う え 思の儘に窮民の餞餓を救ハん手筈なりしが、昨夜に至て、予て一味合体の其一人         かへりちう たる平山助次郎の反忠に依て事顕れ、是も徒党の歴々たる瀬田済之助、小泉淵二                とまり 郎の御両処にハ、折しも奉行所に宿直番たるを以て、直に両奉行の前に召寄せら れ、淵二郎殿ハ即坐にて打取られ、済之助殿一人のみハ、命辛々其場を切抜け、  しか/\ 事云々と註進ありしかば、大塩殿にハ之を聞て少も騒ぐ景色なく、然バ敵より寄    うち     こなた                   さきて せざる中、却て此方より先駈せよ、と即時に人数を呼集め、前隊の大将ハ大塩格     なかぞなヘ           あとぞなへ 之助殿、中隊の大将ハ大塩平八郎殿、後隊の大将ハ瀬田済之助殿にて、兼て約束                              ぐるま   おほづゝ せし窮民のり駈附来りし者共迄、合せて総勢三百余人、火箭が二車に、巨銃が廿   こづゝ 三、小銃が七十有五挺、鎗手総員二十二員、救民の二字を記したる大幟を真先に      み て             こんてう 押立て、三手に分れて押出したるハ、則ち今朝辰の上刻、大塩殿御親子にハ、何     おとし れも黒糸絨の鎧に桃形の兜を召され、其余のお歴々方にハ、或ハ甲冑又ハ小具足、    くさり 中には鏈帷子に白布にて、鉢巻計せられたるものあり、加勢の百姓ハ、何れも陣 笠に竹槍を引提げたり、

   


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