Я[大塩の乱 資料館]Я
2019.5.8

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「大塩の乱関係論文集」目次


なにはいぶん  しほの なごり
「浪華異聞 大潮余談」
 その49
宇田川文海 (1848−1930)

『絵入人情 美也子新誌 第17号』所収 駸々堂 1882

◇禁転載◇

 第17回(2)管理人註
  

罪人とは云へ、共徳川家よりお預けの者故、等閑ならずして、一人に附き飯米白米五 升、屋敷代白米七升、都合一斗二升を藩より渡さるゝ規則なれバ、領主に於ても甚し き苛刻なる扱ひハ為さぬ慣習なるが、殊に常太郎ハ未だ十五歳の美少年なるに、己が 犯せし罪にもあらで、此ハ配所の月を見る、憐れ果敢なき身の上なれバ、弥左衛門も 格別不便の者と思ひて、慰労に置しが、心なき村人も、常太郎が年も行で此る憂目を 見るを最愛がりて、物など携へて見舞に来るものもある、 其中に此村にて一二の豪家と聞ゆる岡部清助ハ、殊更に常太郎を寵愛なし、弥左衛門 に強て頼て、果ハ吾家の隠居所に引取て世話を成し、自己が暇あるに任せて、日々常 太郎を誘ひ、今日ハ何処、明日ハ彼処と、国中の名所古跡を残る隈なく縦覧させ、只 管其心を慰め居りしは、世にも珍なる慈善家と云ふべし、 爰に同国某村に、大満山大満寺とて観音薩陀を安置せる一刹あり、 海岸に高く聳えて美く、世塵を隔て、水ハ俗煩を洗ひ、那の大士の常住さるゝと伝聞 く、南海の普陀落迦、山も此やと思ふ計なる清浄無垢の霊境なるが、年々六月十八日 ハ、海中より龍灯出現して、此寺の本堂の前なる松の大樹に掛り、夜の明る迄消ざる を以て例とする事なるが、本年も今日も其龍灯会の当日なり、

苛刻
無慈悲でむごいこと、
酷である



























龍灯
怪火、主に海中
より出現する、
日本各地に伝わる


「浪華異聞 大潮余談」目次/その48/その50

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