八月朔日暫く狂風吹く。
〔頭書〕当朔日の大風にて、尾州白鳥祠を吹飛す。本社の下に穴あり、其辺の子供等其穴に石を投ずるに、はるか底に到りて金声をなす故、社人・氏子等寄集り是を試るに、其深きこと井の如くにして計り難し。何分怪しく思ふにぞ、何れも申合せ火を灯し穴中に入しに、数十丈の下に種々の神宝竝べてあり。一端これを取出し、又元の如くに之を納め置きぬ。其図別紙に記し置く、夫を見て知るべし。何とも分り難き古物か。
三日夜に入り風。
四日曇、時々雨。夜中降続き初更雷鳴。
五日巳の刻雨止み大水出づ。
六日益々甚し。
七日微雨。
八日時々雨。夜中降続き九日雨、午の刻大雷・大雨。
十日洪水。
十一日申の刻より曇り、初更より雨。
十三日未明より少雨、午の刻より風雨烈しく終夜雨。
十四日未明より雨、辰の刻より尤甚しく木を折り砂を飛ばし、終日止まず、夜に入り晴れ洪水出づ。
中の島・堂島等地面低き処は大道も水浸しに相成り 此大風にて近江・美濃・尾張・遠江其外諸国とも家蔵・樹木を倒し、田畠も散々に成り果てしとて、種々風説をなす。近江にては米買占めの者、直段下落にては大損と成る故、神社・仏閣・湖水等へ死人を焼きし灰を蒔きて不作を祈りし故、かかる大風吹出しなど専ら風聞す。是も全く米相場する姦商共の、諸人をあやかす事と思はる。篤と其後に至り処々問合せしに、田畠には何れの国にても、少も障る事なしといふ。姦商の所作悪むべし。 夫より日々米価を引上げ、又三百目余の直段となる。
十五日曇、二更より雨。
十六日未明より大雨・大雷、已後時々雨。
十七日風。
十八日曇、時々雨。
廿一日申の刻より小雨。
廿二日曇、巳刻より小雨、午刻より大雨終夜降る。
廿八日時々小雨。
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