矢野太郎編『国史叢書 浮世の有様 1』 国史研究会 1917 所収
| 例 言 |
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一、本輯に載するところは、浮世の有様第一冊及第二冊にして、年代は文化三年より文政十三年に至る。即ち記事の大要は文化三年露船エトロフに到来の事、文政三年長崎奉行交迭に関する事、同五年の津軽騒動、宮津百姓一揆、同六年江戸西丸の刃傷一件、伊予松山一揆、紀州一揆、文政十一年の諸国洪水・大風、同十二年の江戸大火及び切支丹始末、同十三年御蔭参りの記等なり。就中御蔭参りの一篇は頗る詳密を極め、最も異彩あり、悉さに時の風俗・人情を描出し尽して遺憾なし。
一、一般の読過に便ならしむる為め、語尾を補ひ、文字を略ぼ一定し、普通に耳慣れざる語辞或は難語には頭註を下し、又文中童蒙を悩しむる文字には振仮名を施し、書簡・法令・其他書中に於ける引用文は、読下しに改めずして、原の体を存せること等、既刊武野燭談に同じ。
一、既に解題に述べたるが如く、本書はその性質上更に統一なし、故に読誦の便を計り、仮に大綱と見るべき処には〜〜〜〜を入れ、細目と見倣すべき処には、――――を入れ、大綱を以て目次を編制せり、読者乞ふこれを了せよ。