● いだ
一二七 孟子曰く、「人臣たる者、利を懐いて以て其
の君に事へ、人の子たる者、利を懐いて以て其の父
に事へ、人の弟たる者、利を懐いて以て其の兄に事
ふ。これ君臣父子兄弟終に仁義を去り、利を懐いて
以て相接す。然り而て亡びざる者、未だこれ有らざ
るなり」と。世の臣子弟たる者、之に似ざらんや。
又た曰く、「人臣たる者仁義を懐いて以て其の君に
事へ、人の子たる者、仁義を懐いて以て其の父に事
へ、人の弟たる者、仁義を懐いて以て其の兄に事ふ。
これ君臣父子兄弟、利を去り、仁義を懐いて以て相
接するなり。然り而て王たらざる者未だこれあらざ
るなり」と、世の臣子弟たる者、之に似んか。而て
臣子弟たる者の、或は利を懐き、或は仁義を懐く、
●
是れ孰か之を主張するや。果して天か、抑々人か。
人なれば則ち聖道に法らずして、而て臣子弟たる者、
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安んぞ彼れを出で此れに入るを得んや。然り而て孟
●しんへん
子の言は、臣子弟の鍼なり。
孟子曰、「為人臣者、懐利以事其君、為人
子者、懐利以事其父、為人弟者、懐利以事
其兄、是君臣父子兄弟、終去仁義、懐利以相
接、然而不亡者。未之有也、」世之為臣子弟
者、不似之耶、又曰、「為人臣者、懐仁義
以事其君、為人子者、懐仁義以事其父、
為人弟者、懐仁義以事其兄、是君臣父子兄
弟、去利、懐仁義以相接也、然而不王者、未
之有也、」世之為臣子弟者、似之耶、而為
臣子弟者之或懐利、或懐仁義、是孰主張之
耶、果天乎、抑人乎、人則不法於聖道、而為
臣子弟者、安得出彼入此也哉、然而孟子之言、
臣子弟之鍼也、
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●孟子告子下篇
に出づ。
●天性か、人為
か。
●仁義を出でて
利に入る可らざ
るをいふなり。
●鍼。皆針医
の用ふる針なり、
昔は石にて作る。
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