けいがく
一三八 詩文を作る、経学家以て非と為すは、恐らく
●りくけい
は亦た非なり。六経は便ち是れ聖人の詩文なり。故
に学人先づ其の良知を明らかにして、而て平日心に
●うん ふ
蘊する者を以て、物に触れ事に感じ、吐いて詩文と
なせば、則ち詩文は乃ち学を助く、聖道に於て何の
害かこれあらん。もし亦た良知を明らかにせず、而
ほまれ
て徒に筆墨を弄し、以て名を売り誉を求むれば、則
はいち ●てうちう ぎ
ち道と大いに背馳す。要するに彫虫の小技と為す、
豈惜しむべきにあらざらんや。
作 詩文 、経学家以為 非者、恐亦非也、六経便
是聖人之詩文也、故学人先明 其良知 、而以 平
日蘊 於心 者 、触 物感 事、吐為 詩文 、則詩文
乃助 于学 、於 聖道 何害之有。若亦不 明 良知 、
而徒弄 筆墨 、以売 名求 誉、則与 道大背馳、要
為 彫虫小技 、豈非 可 惜乎、
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●六経。詩、書、
礼、楽、易、春
秋を云ふ。
●蘊。蘊蓄。
●彫虫。揚雄の
法言に「文章は
彫虫の小技」と
あり、虫が木を
刻むやうな、小
細工。
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