つめた
一五〇 水の性本と寒し、火其の下に在れば、則ち沸
ふつ\/ ゆ をは
沸然として化して湯となり了る。其の時に当つて、
かん
水ありと雖も、寒絶えて無し。人の性は本と善なり、
●ちやう\/
物其の外を誘へば、則ち々然として化して悪とな
り了る。其の時に当つて、人存すと雖も、善或は無
●いぜん
し。然れども其の火を去れば、則ち寒復た依然たり、
こば げんざい
其の物を拒めば、則ち善亦た現在す。もし火を去る
せうこ
こと早からざれば、則ち焦枯して水と性と倶に滅ぶ。
こば げん
物を拒むこと厳ならざれば、則ち壊乱して人と性と
倶に亡ぶ。是れ当然の理なり。吾が輩宜しく性を失
くふう
はざるの工夫を用ふべきのみ。
水性本寒矣、火在其下、則沸沸然化為湯了、当
其時、水雖有、寒絶無也、人性本善矣、物誘其
外、則々然化為悪了、当其時、人雖存、善
或無也、然去其火、則寒復依然、拒其物、則
善亦現在、如去火不早、則焦枯而水与性倶滅矣、
拒物不厳、則壊乱而人与性倶矣、是当然之理也、
吾輩宜用不失性之工夫也已矣、
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