くも は わ
一五二 昨陰りて今晴る。予れ偶々弟子と園地を歩み、
忽ち天を仰いで曰く、今は即ち陰りて、而て昨は乃
おどろ
ち晴れたるかなと。弟子駭いて曰く、先生豈狂する
か、今は晴れて反つて之を陰ると謂ひ、昨は陰りて
なんじ
反て之を晴ると謂ふは何ぞやと。曰く、これ輩の
●
知る所にあらざるなり。夫れ今の晴れは、特に散ず
●あつま
るのみ、咋の陰るは、只だ聚るのみ。今散ずと雖も、
其の聚る所以の者、亦た太虚中に充塞す。昨聚ると
へんぷ
雖も、其の散ずる所以のもの、亦た太虚中に布す。
是の故に聚ると雖も必ず散ず、故に曰く、昨は晴る
と。散ずと雖も必ず聚る、故に曰く、今は陰ると。
言奇にして奇にあらず、これ常理なり。もしよく之
れうご ●みはついはつ
を了悟せば、則ち未発已発の理も亦た一般なり。而
まさ ●
て当に戒懼慎独の実功たるを知るべきなるかな。
昨陰而今晴、予偶与弟子歩園地、忽仰天曰、
今即陰、而昨乃晴也哉、弟子駭曰、先生豈狂矣
乎、今晴而反謂之陰、昨陰而反謂之晴、何也、
曰、此非輩所知也、夫今之晴、特散焉耳、昨
之陰、只聚焉耳、今雖散也、其所以聚者、亦
充塞乎太虚中矣、昨雖聚也、其所以散者、亦
布乎太虚中矣、是故雖聚必散矣、故曰昨晴、
雖散必散矣、故曰今陰、言奇而非奇、是常理也、
如能了悟之、則未発已発之理亦一般、而当知
戒懼慎独之為実功也夫、
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●散。陰気散す。
●聚。陰気聚る。
●中庸に本づく。
喜怒京楽の未だ
発せざるは未発
なり、発して節
に中るは已発な
り、陰晴相倚り、
未発已発相寓す。
●戒懼云々。中
庸に本づく。
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