●いんうん これ
一五四 一門人・天地 の状を問ふ。曰く近く諸を
くら
身に取れば則ち知り易しと。曰く、闇くして知り難
なんじ ●そくき いんうん
しと。今爾満口の息気即ち なり、知り難しとは
何ぞや。
一門人間 天地 之状 、曰、近取 諸身 則易 知、
曰、闇而難 知矣、今爾満口息気即 、難 知矣
者、何耶、
あやま お
一五五 内に虚なる者、誤つて水に堕つれば、則ち皆
しず ● ら
浮んで まず。これ特に虫豸禽獣のみにあらず、人
と雖も亦た然り。然れども人は則ち んで浮ばずし
て死す、十人にして十人、百人にして百人、曾て一
くわつ
活する者ある無きは何ぞや。此れ他なし、其の水に
お
堕つれば、即ち生を欲し、死を悪むの念を起すこと
● み
彼れより甚だし。而て其の念既に方寸に塞つ、故に
ふる あし
方寸実して にあらず、况や手を振ひ脚を動かし、
のど けうがう
咽を破り、叫号するをや。 んで浮ばずして死する
けう
は、此れを以てなり。もし其の念と其の動叫と無く
い
んば、則ち必ず浮んで まずして活きん。是れ天理
あやし 人 ●らてい
なり、又た奚んぞ異まんや。或曰く、裸 は則ち子
お
の言の如く、或は然る者あらん、衣裳して堕つ、則
ち如何と。曰く、心に誠敬を存して太虚に帰するの
じん おもむ と
人は、則ち数万仭の海底と雖も、徐ろに其の帯を解
ぬ
き、其の衣裳を脱ぐこと、是れ難きことなし。鳴呼、
お じゆつ
此れ独り水に堕つる時の術のみならんや。
虚 於内 者、誤堕 水、則皆浮而不 、此非 時虫
豸禽獣 、雖 人亦然、然人則 而不 浮而死焉、十
人而十人、百人而百人、曾無 有 一活者 、何也、
此無 他、其堕 水、即起 欲 生悪 死之念 甚 乎彼 、
而其念既塞 乎方寸 、故方寸実而非 、况振 手
動 脚、破 咽 号乎、 而不 浮而死焉、以 此也、
如無 其念与 其動 、則必浮而不 而活矣、是
天理也、又奚異哉、或曰、裸 則如 子言 有 或然
者 、衣裳而堕焉、則如何、曰、心存 誠敬 而帰
乎太虚 之人、則雖 数万仭之海底 、徐解 其帯 、
脱 其衣裳 、是無 難矣、鳴呼、此独堕 水時之術
而已哉、
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● 。気が、
もや\/と盛な
る意。易の繋辞
伝に「天地
万物化醇」とあ
り。
●息気。呼吸の
気。
●虫豸。虫の足
なきを豸といふ。
●虫豸より甚し。
●裸 。はだか。
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