● やや うつ
一五六 狷忿に類する者あり、動もすれば心に鬱して
にく ●れん しゆよ
人を悪む。予之に告げて曰く、子は廉にして取予を
ゆ こ
謹み、諛言を吐いて以て人に媚びず、子が心よく知
●
るや否やと。曰く、よく知ると。これ乃ち子の流俗
人と相反する処なり、子が心亦たよく知るや否やと。
●と
曰く、能く知ると。而て子妬心あり、時に竊かに発
す、之を知らざるやと。曰く、有り、故に知らずと
●ちようじよく すうひ
謂ふを得ずと。子寵辱に驚くと禍福を趨避するとの
心あり、子之を知らざるやと。曰く、有り、故に亦
た知らずと謂ふを得ずと。これ即ち流俗の人と、子
いずく
と相同じき処、子亦た之を知らざるやと、曰く、安
ひつきよう
んぞ知らずと謂ふを得んやと。然らば則ち畢竟子と
●あと
流俗の人と相反するは、乃ち其の跡のみ、而て心は
則ち殊別なし、又た何ぞ彼れを非とし、我れを是と
●かう\/
し、 然として怒るを為さん。
有 類 狷忿 者 、動鬱 心而悪 人、予告 之曰、子
廉而謹 取予 、不 吐 諛言 以媚 人、子心能知否、
曰、能知、是乃子与 流俗人 相反処、子心亦能知
否、曰、能知、而子有 妬心 、時竊発、不 知 之
乎、曰、有焉、故不 得 謂 不 知、子有 驚 寵辱 、
与 趨 避禍福 之心 子不 知 之乎、曰、有焉、故
亦不 得 謂 不 知、是即流俗人、与 子相同処、
子亦不 知 之乎、曰、安得 謂 不 知哉、然則畢
竟子与 流俗人 相反、乃其跡耳、而心則無 殊別
矣、又何非 彼是 我 然怒為、
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●狷忿。狭量。
躁急にして忿る
こと。
●廉。廉潔。
●流俗人。世間
一般の人。
●妬心。嫉妬心。
●寵辱。寵は順
境、辱は逆境。
●跡。表面行為
上の事。
● 々然。むく
むく腹を立てる。
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