山田準『洗心洞箚記』(本文)132 Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.3.20

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『洗心洞箚記』 (本文)

その132

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

       せいせん  たう  けつ  はう  ぶ  ちう 一六一 孟子、斉宣が湯の桀を放し武の紂を伐つを問  ふの章に至れば、君子必ず口に此の語を誦するに忍  びず、然かも君子猶之を講ずるは何ぞ。只だ其の仁   そこな                なん す  を賊ひ義を賊ふの四字あるを以てのみ。曷為れぞ其  の四字あるを以て、君子猶之を講ずるや。夫れ君子         これ  の書を読む者、諸を吾が心に反求し、而て之を紙上   ぐわいきう  に外究せず。故に我れ仁を賊ふこと彼れの如きか、                    ねん\/これ  我れ義を賊ふこと亦た彼れの如きかと、念念諸を吾   ゑにち  と               たと  が慧日に詢ひ、もし賊ふことあらば、則ち縦ひ人禍         いづく  を免るるとも、焉んぞ天誅を免れん。賊はずんば、     ほまれ  則ち人誉なしと雖も、必ず天祐あり。是の故にもし  那の四字ある無くんば、則ち君子は必ず之を読まざ       らん。設し孔子をして其の問に答へしむれば則ち必                    ばくろしゆんぱつ  ず無窮の味ありて、而て此の如き英気の暴露峻発に             かん    こゝ     ほゞ  至らざらんか。聖賢の一間は、是に於て略見るべし。   孟子、至斉宣問湯放桀武伐紂之章、君子必   不口誦此語、然君子猶講之何、以只其有   賊仁賊義四字也耳、曷為以其四字、君子   猶講之乎、夫君子之読書者、反求諸吾心、而   不究之紙上、故我賊仁如彼乎、我賊義亦   如彼乎、念念詢諸吾慧日、如有賊焉、則縦免   人禍、焉免天誅、不賊焉、則雖人誉、   必有天祐、是故如無那四字、則君子必不   読之也、設使孔子答其問、則必有無窮之味、   而不此英気之暴露峻発也歟、聖賢之一間、   於是略可見矣、



孟子。梁恵王
下篇に出づ、孟
子斉宣王が湯武
の放伐を問ひし
に答へて「仁を
賊ふ者は之を賊
といふ、義を賊
ふ者は之を残と
いふ」の語あり。








慧日。心霊。








暴露峻発。さ
らけ出して、き
びしく言ふ、「一
夫の紂を誅する
を聞く云々」に
当る。

一間。一段階
の隔て。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その131/その133

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