山田準『洗心洞箚記』(本文)145 Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.5.19

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『洗心洞箚記』 (本文)

その145

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

       げつが         こう 一七四 明史の月娥伝を読み、寇至つて城陥る、月娥           しれい      せつ  嘆じて曰く、「吾れ詩礼の家に生る、節を賊に失ふ            いだ  べけんや」と、幼女を抱き水に赴いて死するに至つ        くわん おほ       がい  て、未だ嘗て巻を掩うて以て慨然として流涕せずん       けんはいくわんしやう かう  う    おく  ばあらず。剱佩冠裳し、降を売つて後るるを恐るる    と   こ  さつ   が び  たい  の徒、是の冊子中の蛾眉に対し、面目無きにあらざ                  けが     らんや。吾れ詩を賦して曰く、「身を汚す独り河間                   しか  の婦のみにあらず。天下の男児多く亦た然り。月娥  なにもの       は        りうし がん   うつく  何者ぞ詩礼に恥ぢんや。水上の流尸顔尚ほ妍し」と。   読明史月娥伝、至寇至城陥、月娥嘆曰、「吾   生詩礼家、可節於賊耶、」抱幼女水   死、未嘗不巻以慨然流涕也、剱佩冠裳、売   降恐後之徒、対是冊子中娥眉、非面目矣   乎、吾賦詩曰、「汚身不独河間帰、天下男児   多亦然、月娥何者恥詩礼、水上流尸顔尚妍」、



月娥。明史烈
女伝に在り。

詩礼。読書の
家。


剱佩云々。武
装礼服。

蛾眉。うつく
しき眉、美人を
云ふ。

河間婦。柳宗
元の文集に見ゆ、
淫婦の称。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その144/その146

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