山田準『洗心洞箚記』(本文)169 Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.8.6

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『洗心洞箚記』 (本文)

その169

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

下 巻訳者註

   おうよう     あんさつ 一八 欧陽公再び按察官吏を論ずる状の略に曰く。              ざうり  「不材の人は、害を為すこと臓吏より深し。国家      のぞ  の法、臓吏を除くは、民の告発者に因つて乃ち之                    やぶ  を行ふ。其の他の不材の人は、大は州を壊り、小  は県を壊る、皆明知すれども問はず。臣謂ふ、凡            きやうかつ  そ臓吏は、多くは是れ強黠の人にして、取る所豪  富に在りて、或ひは貧弱に及ばず。不材の人は、    ぎよ          きつしゆ  下を馭する能はず。其の一身乞取する能はずと雖           ほしいまゝ      ちうはく  も、而も其の羣下を恣にせしめ、共に誅剥を行ひ、             わざはひ  更に貧富と無く、皆其の殃を被むる。害を為すこ            と至つて深きも、縦るして問はず。故に臣尤も尽     びうだ             しりぞ  く老病繆懦者を取り、臓吏と一例に之を黜けんと       つまびらか           げうき  欲す」と。審に是の如くば、澆季のとき、恐らく  は官に人なく、吏も亦た人なきに至らん。故に公             執政の時と雖も、之を汰する此の如くなる能はざ       あ ゝ  るなり。鳴呼、勢の在る所、豈但だ公のみならん                いかん  や。抑も聖人と雖も、亦た之を奈何ともする無し。   欧陽公再論按察官吏状略曰、「不材之人、為   害深於臓吏、国家之法、除臓吏、因民告   発者乃行之、其他不材之人、大者壊州、小   者壊県、皆明知而不問、臣謂凡臓吏、多是強   黠之人、所取在於豪富、成不貧弱、不   材之人不下、雖其一身不乞取、而   恣其羣下、共行誅剥、更無貧富、皆被其   殃、為害至深、縦而不問、故臣尤欲尽取老   病繆懦者、与臓吏一例黜之、」審如是則   澆季恐至於官無人、吏亦無人矣、故公雖執   政之時、不之如此也、鳴呼、勢所在   豈但公、抑雖聖人亦無之何



欧陽公。名は
修、宋の名臣。

不材の人。材
幹のない、つま
らない官吏。

臓吏。賄賂を
とる官吏。








誅剥。誅求剥
奪。



繆懦。不正と
怯懦。




汰。淘汰する。
即ち悪しき官吏
を罷めさせる。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その168/その170

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