●おうよう あんさつ
一八 欧陽公再び按察官吏を論ずる状の略に曰く。
● ●ざうり
「不材の人は、害を為すこと臓吏より深し。国家
のぞ
の法、臓吏を除くは、民の告発者に因つて乃ち之
やぶ
を行ふ。其の他の不材の人は、大は州を壊り、小
は県を壊る、皆明知すれども問はず。臣謂ふ、凡
きやうかつ
そ臓吏は、多くは是れ強黠の人にして、取る所豪
富に在りて、或ひは貧弱に及ばず。不材の人は、
ぎよ きつしゆ
下を馭する能はず。其の一身乞取する能はずと雖
ほしいまゝ ●ちうはく
も、而も其の羣下を恣にせしめ、共に誅剥を行ひ、
わざはひ
更に貧富と無く、皆其の殃を被むる。害を為すこ
ゆ
と至つて深きも、縦るして問はず。故に臣尤も尽
●びうだ しりぞ
く老病繆懦者を取り、臓吏と一例に之を黜けんと
つまびらか げうき
欲す」と。審に是の如くば、澆季のとき、恐らく
は官に人なく、吏も亦た人なきに至らん。故に公
●だ
執政の時と雖も、之を汰する此の如くなる能はざ
あ ゝ
るなり。鳴呼、勢の在る所、豈但だ公のみならん
いかん
や。抑も聖人と雖も、亦た之を奈何ともする無し。
欧陽公再論 按察官吏 状略曰、「不材之人、為
害深 於臓吏 、国家之法、除 臓吏 、因 民告
発者 乃行 之、其他不材之人、大者壊 州、小
者壊 県、皆明知而不 問、臣謂凡臓吏、多是強
黠之人、所 取在 於豪富 、成不 及 貧弱 、不
材之人不 能 馭 下、雖 其一身不 能 乞取 、而
恣 其羣下 、共行 誅剥 、更無 貧富 、皆被 其
殃 、為 害至深、縦而不 問、故臣尤欲 尽取 老
病繆懦者 、与 臓吏 一例黜 之、」審如 是則
澆季恐至 於官無 人、吏亦無 人矣、故公雖 執
政之時 、不 能 汰 之如 此也、鳴呼、勢所 在
豈但公、抑雖 聖人 亦無 奈 之何 、
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●欧陽公。名は
修、宋の名臣。
●不材の人。材
幹のない、つま
らない官吏。
●臓吏。賄賂を
とる官吏。
●誅剥。誅求剥
奪。
●繆懦。不正と
怯懦。
●汰。淘汰する。
即ち悪しき官吏
を罷めさせる。
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