二四 勇士は気を養うて理を明かにせず。儒者は理を
明かにして気を養はず。常人は則ち気を養はず、
すうひ
亦た理を明かにせず、栄辱禍福惟だ是れ趨避す
●
るのみ。理気合一、天地と徳を同じうし、陰陽
と功を同じうする者は、其れ惟だ聖賢か。
勇士養気而不明理、儒者明理而不養気、
常人則亦不養気、亦不明理、栄辱禍福、
惟是趨避而已矣、理気合一、与天地同徳、
陰陽同功者、其惟聖賢乎、
二五 血気の気は、血盛なれば則ち盛なり、血衰ふれ
たの ●
ば則ち亦た衰ふ。故に恃むに足らず。浩然の気は、
則ち血の盛衰に因つて以つて盛衰を為さず。而て
常に身心に充塞し、死に至つて衰へず、変らず。
● さく か ●えい
曾子簀を易へ、子路纓を結ぶの類の如き是れなり。
● ●かう
集義の功を積みて、心に慊する者にあらざるより
は、之を得る能はず。
血気之気、血盛則亦盛、血衰則亦衰、故不足
恃、浩然之気則不因血盛衰以為盛衰、而常
充塞身心、至死不衰不変、如曾子易簀子
路結纓之類是也、自非積集義之功而慊于
心者、不能得之、
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●理気合一。理
と気とは二なり
とする二元論に
対して、之を合
一なりと視る一
元論。
●孟子公孫丑上
篇に浩然の気の
章あり、正気を
いふ。
●簀。「すのこ」、
敷物なり、曾子
死に臨み簀を取
り易ふ、礼記檀
弓篇に見ゆ。
●纓。冠の紐、
子路衛の乱に死
する時、礼を正
し纓を結んで死
す、史記に見ゆ。
●集義。孟子浩
然の気の章の語。
●慊。満足の意。
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