● か
三〇 質・文に勝つものは、多聞多見を事とせずと
雖も、而も良知内に失はず、猶石中の火のごとし。
あら や
特に未だ用に顕はれざるのみ。故に曰く野と。文・
質に勝つ者は、嘗て良知を信ぜず。而て博識意見、
げん や
只だ外に馳す、猶原を燬くの火の如し、既に本体
か ●せい しつちゆう
を失ふ。故に曰く史と。夫の精一執中の学に従事
する者の若きは、則ち良知を内に失はず、而て之
あた ひんぴん
を事事物物に致し、発して皆節に中る。彬彬たる
を欲せずと雖も得んや。故に曰く君子と。
質勝文者、雖不事多聞多見、而良知不失
乎内、猶如石中火、特未顕於用耳、故曰
野、文勝質者、嘗不信良知、而博識意見、
只馳於外、猶如燬原火、既失本体矣、故
曰史、若夫従事精一執中之学者、則不失
良知於内而致之於事事物物、発皆中節矣、
雖不欲彬彬得乎、故曰君子、
お あふ み
三一 晴夜起き、仰いで天文を観る。乃ち古聖賢の
●さんさくらんさん ことごと●こ
文章、法あつて参錯爛燦明白神奇なるもの咸く這
れ のつ
箇に則とり来れることを知る。
晴夜起、仰観天文、乃知古聖賢文章、有法
而参錯爛燦明白神奇者、咸則這箇来、
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●論語雍也篇に.
質文に勝てば、
則ち野、文質に
勝てば、則史、
文質彬々、然る
後に君子とあり、
野は鄙野、史は
事に習ひ誠足ら
ず、彬々は光采
美はしきなり。
●精一執中。書
経大禹謨に、堯
舜禹相授けて、
惟れ精、惟れ一、
允にその中を執
れとあり。
●参錯云々。文
(アヤ)ありて入
りまぜり、きら
きらとかゞやく。
●這箇。俗語、
天文を指す。
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