●しゆくだ ねい
四七 祝 の章を読み、嘆じて曰く、春秋の世、侫
び
を好み美を悦ぶ。葢し其の時に当つて、大学の道
おのづか
既に亡び、而て致知の教自ら廃す。是の故に人人
●
心の神明の何物たるかを知らず、只だ気に触れ意
に随ひ侫を好み美を悦ぶのみ。故に祝 の輩志を
得て以て姦を行ふ。而て其の君たる者は、昏然と
きばう
して其の欺罔する所と為り、無知の物と一般に、
遂に身を亡し以て家国を破るに至る。之を要する
に其の良知を致すを知らざるを以てなり。後人も
し良知を致すを知らずんば、則ち祝 の輩何の世
かれ きばう
かこれ無からん。恐らくは他の為めに亦た欺罔せ
いまし
られん。聖人之を言に載す、惟だ当時を誡むるの
ことば
みならず、天下万世の為めに言を立てしなり。之
●ゆるがせ
を読む者、豈忽にすべけんや。
読 祝 章 、嘆曰、春秋之世、好 侫悦 美、葢
当 其時 、大学之道既亡、而致知之教自廃矣、
是故人人不 知 心神明為 何物 、只触 気随 意、
好 侫悦 美而已、故祝 輩得 志以行 姦、而其
為 君者、昏然為 其所 欺罔 、与 無知之物 一
般、遂至 於亡 身以破 家国 、要 之以 不 知
其致 良知 也、後人如不 知 致 良知 、則祝
輩何世無 之、恐為 他亦所 欺罔 、聖人載 之
言 、不 惟誡 当時 、為 天下万世 立 言也、
読 之者、豈可 忽哉、
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●論語雍也篇に.
子曰く、祝 の
侫ありて宋朝の
美あらずんば、
難いかな今の世
に免るゝこと、
とあり、祝 と
宋朝とは共に人
名。
●心の神明。即
ち良知。
●忽。かるくみ
る。
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