●おうやうなんや ●たいせき いわう
四九 欧陽南野先生曰く。「載籍は已往の師友、師
けんざい
友は見在の載籍、其の用一なり。然れども人往往
独り載籍に学ぶを楽んで、而て共に朋友に学ぶを
●きせつ
楽しまず。其の故を察せざるべけんや。朋友規切
●じんこあひけい ● い
すれば、則ち人己相形して、情偽将に容るる所な
●しようしん ていご
からんとす。而て勝心之が牴牾を為す。載籍は則
●えんふ けん
ち其の人己に往く、或は縁附して見を立つるを得
ふつぎやく
て、而て勝心払述する所無し。故に凡そ載籍を学
● こ
んで、而て朋友の助なければ、勝心に錮せられて、
すくな ●
自用に流れざるは鮮し。多識以て徳を畜ふ者は、
其れ友を取るを以て本と為すなからんや」と。此
ゆるが ●
れ只だ書を読んで友を忽せにするものの鍼薬なり。
学者は益友を求めざるべからざるなり。而て益友
あやま おのれ し
は常にあらず、誤つて己に如かざる老を取らば、
則ち反つて己の徳を損す。己の徳を損すれば、則
し
ち載籍を友とするに若かざるなり。而て載籍は四
書六経、及び宋元明清の大儒の遺書の外は、亦た
そん ちか ざつらん
損友に庶し。故に之を雑覧せず便ち是れ心を失は
ざるの一端なるかな。
欧陽南野先生曰、「載籍著、已往之師友、師友
者、見在之載籍、其用一也、然人往往楽独学
於載籍、而不楽共学於朋友、可不察其
故哉、朋友規切、則人己相形、情偽将無所
容、而勝心為之牴牾、載籍則其人已往、或得
縁附立見、而勝心無所払逆、故凡学載籍、
而無朋友之助、鮮不錮於勝心而流於自
用、多識以畜徳者、其無以取友為本也
哉、」此只読書而忽友者之鍼薬也、学者不
可不求於益友也、而益友不常有、誤取
不如己者、則反損己徳、損己徳、則不
若友載籍也、而載籍四書六経、及宋元明清
大儒遺書之外、亦庶乎載友、故不雑覧之、
便是不失心之一端也哉、
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●欧陽南野。欧
陽徳、南野と号
す、王陽明の高
弟。
●書物は過去の
師友。
●規切。正しく
切磋する。
●人己云々。過
失を規切するか
ら、人の善と己
の悪と対立させ
る。
●善悪が隠れる
所が無い。
●勝心云々。負
けぬ気、即ち勝
ち気が、朋友の
規切と衝突する
の意。
●縁附云々。因
縁づけ、こじつ
けて、見解を立
てること。
●勝心に禁錮し
縛られて、自用
気儘に流る。
●易大畜の卦象
辞云ふ、君子は
多く前言往行を
識つて其の徳を
畜ふ。
●鍼薬。鍼は鍼
治のはり。
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