洗心洞箚記上
中斎先生著 門人 松本乾知 点
松浦誠之 校
但馬守約
かみ さう\/ ●
一 天は特に上に在る蒼蒼たる太虚のみならざるなり。
ちくちゅう いは
石間の虚、竹中の虚と雖も、亦た天なり。況んや
らうし ●こくしん
老子云ふ所の谷神をや。谷神とは人心なり。故に
めう けん
人心の妙天と同じ。聖人に於て験すべし。常人は
いづく かた
則ち虚を失ふ、焉んぞ之を語るに足らんや。
天不特在上蒼蒼太虚已也、雖石間虚、竹中虚、
亦天也、況老子所云谷神乎、谷神者、人心也、故
人心之妙与天同、於聖人可験矣、常人則失虚、
焉足語之哉、
| 洗心洞箚記。洗
心は易の繋辞に
「聖人此れを以
て心を洗ふ」と
あるに取る、洞
は白鹿洞などの
洞にて、塾舎の
義。箚記(サツ
キ)は札記。
●太虚。太空な
り、学問上には
虚霊の義、宋の
張横渠以来盛に
之を論ず。
●谷神。老子道
徳経に見ゆ、虚
無の神。
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