山田準『洗心洞箚記』(本文)201

山田準『洗心洞箚記』(本文)201 Я［大塩の乱資料館］Я
2010.9.16

『洗心洞箚記』　(本文)

その２０１

山田　準訳註

岩波書店 1940　より

◇禁転載◇

下　巻 訳者註

　　　きよ　　　　　じんゐ五六　虚も亦た人為の虚と、天成の虚との別あり。　　　　　　　　　　　　 ●くうくわつ　人為の虚とは、即ち宮室の空豁の類なり。天成の　虚とは、即ち人物の心口の類なり。人為の虚は乃　　●ふれい　　　　　　　　　　　　　れい　ふく　ち不霊にして、而て天成の虚は皆其の霊を含む。　　　　　　　　　　　　　　ひい　而て人は之を受けて以て最も秀でたる者なり。然　れども人に欲あれば、則ち天成の虚は反つて不霊　　　　　　　　　　　　　　　も　と為る。而て人為の虚は、則ち本と心あらざるを　　　　　　　　 ●しゆうし　　　　　　　　　● 　以て、物を容れて終始無し。而て要するに皆是れ　太虚の分散なり。故に欲なければ則ち天成の虚、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　い　其の霊乃ち神の如し。而て人為の虚は物を容るる　　　　　　　　　　　　　　たふと　こと此の如し、則ち虚の徳は豈貴きにあらざらん　や。　　虚亦有人為之虚、与天成之虚之別。人為之　　虚者、即宮室空豁之類也、天成之虚者、即人物　　心口之類也、人為之虚乃不霊、而天成之虚皆含　　其霊、而人受之以最秀者也、然人有欲、則　　天成之虚反為不霊、而人為之虚、則以本不　　有心、容物無終始焉、而要皆是太虚之分散　　也、故無欲則天成之虚、其霊乃如神、而人為　　之虚、容物如此、則虚之徳、豈非貴乎、

●空豁。がらんとして広いこと。 ●不霊。宮屋の空虚は、無機的にして霊なし。 ●終始無し。終始の制限なく、絶えず物を容れるる。 ●皆足れ云々。人為の虚も、天成の虚も、皆宇宙の太虚の分散によつて現出したもの。

下　巻	訳者註
きよ　　　　　じんゐ五六　虚も亦た人為の虚と、天成の虚との別あり。　　　　　　　　　　　　 ●くうくわつ　人為の虚とは、即ち宮室の空豁の類なり。天成の　虚とは、即ち人物の心口の類なり。人為の虚は乃　　●ふれい　　　　　　　　　　　　　れい　ふく　ち不霊にして、而て天成の虚は皆其の霊を含む。　　　　　　　　　　　　　　ひい　而て人は之を受けて以て最も秀でたる者なり。然　れども人に欲あれば、則ち天成の虚は反つて不霊　　　　　　　　　　　　　　　も　と為る。而て人為の虚は、則ち本と心あらざるを　　　　　　　　 ●しゆうし　　　　　　　　　● 　以て、物を容れて終始無し。而て要するに皆是れ　太虚の分散なり。故に欲なければ則ち天成の虚、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　い　其の霊乃ち神の如し。而て人為の虚は物を容るる　　　　　　　　　　　　　　たふと　こと此の如し、則ち虚の徳は豈貴きにあらざらん　や。　　虚亦有人為之虚、与天成之虚之別。人為之　　虚者、即宮室空豁之類也、天成之虚者、即人物　　心口之類也、人為之虚乃不霊、而天成之虚皆含　　其霊、而人受之以最秀者也、然人有欲、則　　天成之虚反為不霊、而人為之虚、則以本不　　有心、容物無終始焉、而要皆是太虚之分散　　也、故無欲則天成之虚、其霊乃如神、而人為　　之虚、容物如此、則虚之徳、豈非貴乎、	●空豁。がらんとして広いこと。 ●不霊。宮屋の空虚は、無機的にして霊なし。 ●終始無し。終始の制限なく、絶えず物を容れるる。 ●皆足れ云々。人為の虚も、天成の虚も、皆宇宙の太虚の分散によつて現出したもの。

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