● に
五八 師弟の相得る者、必ず肖る所あり。肖る所あ
●
らずして相得る者は、未だこれあらざるなり。顔
●
子の仁、孔子亦たこれあり。子路の勇、孔子亦た
●
これあり。子貢の敏、孔子亦たこれあり。其の余
●てんはいりうり
の諸子の徳、孔子皆亦たこれあり、故に顛沛流離
●けい
の間と雖も、未だ敢て之を去らざるなり。而て
わしゆく じやかつ
和叔の程子に於ける、程子未だ嘗て其の邪黠あら
●わうじゆんほ
ず。王純甫の陽明子に於ける、陽明子未だ甞て其
はくあく ●
の薄悪あらず。故に二子終に程・王を去つて、而
おと へん
て其の学と徳とを墜し、万世猶之を貶す。要する
こゝ を
に其の肖る所あらざるを以て乃ち此に至る。豈惜
に
しむべきにあらずや。然らば師たる者は、其の肖
に
る者を教へ、而て其の肖ざる者を辞して可なり。
しか そん
否らざれば則ち道を損す。道を損すれば、則ち聖
● じ さ しか いは
賢其の君を辞して行る。而も況んや師の弟子に於
けるをや。
師弟之相得者、必有所肖焉、不有所肖而
相得者、未之有也、顔子之仁、孔子亦有之、
子路之勇、孔子亦有之、子貢之敏、孔子亦有
之、其余諸子之徳、孔子皆亦有之、故雖顛沛
流離之間、未敢去之也、而和叔之於程
子、程子未嘗有其邪黠、王純甫之於陽明
子、陽明子未嘗有其薄悪、故二子終去程
王、而墜其学与徳、万世猶貶之、要以其
不有所肖、乃至於此、豈非可惜乎、然
為師者教其肖者、而辞其不肖者而可矣、
否則損乎道、損乎道、則聖賢辞其君而
行、而況師之於弟子乎、
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●相得。精神的
に一致すること。
●顔子。顔回。
●子路。仲由。
●子貢。端木賜。
●顛沛。論語朱
註に傾覆流離と
あり。
●和叔。宋の
恕、字は和叔、
顕要に陞る、始
め程伊川に学び、
後之に背く。
●王純甫。明の
王道、字は純甫、
王陽明に学び、
後之に背く。
●程王。程伊川
と王陽明。
●其の君云々。
孟子が梁恵斉宣
を辞し去る是れ
なり。
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