山田準『洗心洞箚記』(本文)205

山田準『洗心洞箚記』(本文)205 Я［大塩の乱資料館］Я
2010.9.21

『洗心洞箚記』　(本文)

その２０５

山田　準訳註

岩波書店 1940　より

◇禁転載◇

下　巻 訳者註

　　 ●かんまつ　　　　　　　　　よ六〇　漢末に仏法中国に入る、由つて来る所あり。 ●とうし　　たいさく　　　　　●　せ　菫子の対策に曰く。「名を誅めて実を察せずんば、　善を為す者必ずしも免れず、而て悪を犯す者未だ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きよじ　必ずしも刑せられざるなり。是を以て百官皆虚辞　　かざ　　　　　　　　　　　　　　　　　れい　を飾り、而て実を顧みず。外は君に事ふるの礼あ　　　　　　　そむ　　　　　　ぎ　　つく　　さ　　かざ　り、内は上に背くの心あり、偽を造り詐を飾り、　　おもむ　　　　うし　　　　　　　　　あゝ　利に趣き恥を亡なふ」と。吁、此れ乃ち仏の由つ　　　　　　　　　　　てんだうぢごく　て入る所か、此れ乃ち天堂地獄の由つて起る所か。　　　　　　　みづか　然らば則ち仏氏自ら中国に入るにあらずして、而　　　ことさら　　　　　　　　　　　　　● 　て中国故に仏を招いて来らしめしなり。欧陽公の　ほんろん　　　　　けつはい　じよう　　　　　　　　　　ぜ　本論、其の闕廃に乗ずとの説は、是なり。　　漢宋仏法入中国、有所由来焉、菫子対策　　曰、「誅名而不察実、為善者不必免、而　　犯悪者未必刑也、是以百官皆飾虚辞、而　　不顧実、外有事君之礼、内有背上之心、　　造偽飾詐、趣利亡恥、」吁、此乃仏之所　　由入焉乎、此乃天堂地獄之所由起乎、然則　　非仏氏自入中国、而中国故招仏而来也、欧　　陽公本論、乗其闕廃之説、是矣、

●漢末。後漢の明帝永平十年。 ●菫子。前漢の菫仲舒。 ●名を誅む。伝聞評判に依つて、責め吟味す。 ●宋の欧陽修が本論を作り、中国の欠陥に乗じて仏教が入り来つたと論ぜり。

下　巻	訳者註
●かんまつ　　　　　　　　　よ六〇　漢末に仏法中国に入る、由つて来る所あり。 ●とうし　　たいさく　　　　　●　せ　菫子の対策に曰く。「名を誅めて実を察せずんば、　善を為す者必ずしも免れず、而て悪を犯す者未だ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きよじ　必ずしも刑せられざるなり。是を以て百官皆虚辞　　かざ　　　　　　　　　　　　　　　　　れい　を飾り、而て実を顧みず。外は君に事ふるの礼あ　　　　　　　そむ　　　　　　ぎ　　つく　　さ　　かざ　り、内は上に背くの心あり、偽を造り詐を飾り、　　おもむ　　　　うし　　　　　　　　　あゝ　利に趣き恥を亡なふ」と。吁、此れ乃ち仏の由つ　　　　　　　　　　　てんだうぢごく　て入る所か、此れ乃ち天堂地獄の由つて起る所か。　　　　　　　みづか　然らば則ち仏氏自ら中国に入るにあらずして、而　　　ことさら　　　　　　　　　　　　　● 　て中国故に仏を招いて来らしめしなり。欧陽公の　ほんろん　　　　　けつはい　じよう　　　　　　　　　　ぜ　本論、其の闕廃に乗ずとの説は、是なり。　　漢宋仏法入中国、有所由来焉、菫子対策　　曰、「誅名而不察実、為善者不必免、而　　犯悪者未必刑也、是以百官皆飾虚辞、而　　不顧実、外有事君之礼、内有背上之心、　　造偽飾詐、趣利亡恥、」吁、此乃仏之所　　由入焉乎、此乃天堂地獄之所由起乎、然則　　非仏氏自入中国、而中国故招仏而来也、欧　　陽公本論、乗其闕廃之説、是矣、	●漢末。後漢の明帝永平十年。 ●菫子。前漢の菫仲舒。 ●名を誅む。伝聞評判に依つて、責め吟味す。 ●宋の欧陽修が本論を作り、中国の欠陥に乗じて仏教が入り来つたと論ぜり。

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