山田準『洗心洞箚記』(本文)208 Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.9.24

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『洗心洞箚記』 (本文)

その208

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

下 巻訳者註

         めい     しん      し 六三 大学の首章、明の字、親の字、止の字は、皆               自ら責むるの功なり。もし親の字を改めて新の字  に作らば、則ち自ら責めずして之を人に責むるな  り。之を人に責むるは、則ち大学の本旨にあらざ              ぞく  るなり。而かも新は彼れに属す、彼れに属する者  は、聖人と雖も之を如何ともするなし。堯舜は聖                         人なり、子を愛するの明徳を明らかにす。而て丹    しやうきん        あへ           う  朱・商均は不肖に終り而て肯て新にせず。禹は父                 こん  めい  さか  ぞく  を愛するの明徳を明かにす、而て鯀は命に方ひ族   やぶ      あへ  をるに終りて、而て肯て新にせず。周公は兄弟                 くわんしゆく さいしゆく  に友愛なるの明徳を明かにす、而て管叔・蔡叔は、        しやしよく          やぶ  不軌を謀りて社稷を危うし、以て骨肉を傷り、而            て肯て新にせず。孔氏三世、男女室に居るの明徳                     しつ  を明かにす、而て皆妻を出だす。則ち其の室各々       をか             必ず七出を犯し、而て肯て新にせず。諸葛武侯は             こうしゆ           ようぐ  忠の明徳を明らかにして後主に事ふ、後主庸愚に  終つて、而て肯て新にせず。是れを以て之を観れ  ば、則ち聖賢と雖も尽く之を新にする能はず。故  に新の字に作るは味なく、而て吾が道窮す。故に  曰く、大学の本旨にあらざるなりと。親の字の如  きは、則ち尤も味あり、而て実に教義の意を兼ぬ。    おも  吾れ惟ふに堯舜其の子を親しみて、而て終に天下  を丹朱・商均に伝へず、以て之を舜禹に伝ふ、是              めいしん  れ即ち真の教養の至り。豈明親の至善なるものに                  きよくし  あらずや。禹其の父を親しむ、而て死すと雖も、            きら         あ  舜其の罪人の子たるを嫌はず、之を挙げて以て水  土を治めしめ、遂に子を退けて之に天子の位を授  く、而て未だ其の父を新にせざるの罪を正せるを  聞かざるなり。然らば則ち禹の大孝、舜と徳を同  じうすること、此れに在つて彼れに在らざること          じん          知るべし。周公が刃を管叔蔡叔の身にししは、            きよくこう  明徳を明らかにするの極功にあらずんば、此の如                       てん  きの挙を為す能はず。而て天下の人民、皆亦た恬  然として疑はず。而も社稷を安んずるの大功を称  す、則ち平時教養の誠、天を感じ地を動かせるこ    だん  と、断じて知るべし。孔氏の室に於ける、武侯の  君に於ける、皆亦た然り。各新にせずと雖も、誰  か敢て其の徳の不明を謂はんや。故に只だ子為れ  ば則ち孝の明徳を明らかにして父に親しみ、而て  至善に止まる。臣と為れば、則ち忠の明徳を明ら  かにして君に親しみ、而て至善に止まる。新不新  を君父に責めずして、而て親しむの功夫を己に責  むれば則ち心を尽し性を尽すの大学問なり。而て                    こそう  彼の新にするも亦た其の中に在り。故に瞽夫婦    しやう  じよう/\    をさ        いた  及び象は、蒸蒸として乂めて姦に格らざる。皆新                      くこうじよう  の如しと雖も、要するに舜が民を親しむの苦功上  より化し来るなり。




大学の首め三
綱領の第二に
「在民」とあ
り、程伊川は親
は新に作るべし
といふ、朱子は
之に従ふ、王陽
明は、古本のま
まを善しとして、
親しむとよむ。


丹朱。堯の子、
商均は舜の子。

鯀。禹の父、
王命に方(逆)
ひ、一族を
(壊)ること書
経堯典に出づ。

管叔。周公の
兄、蔡叔は周公
の弟。

孔氏三世。孔
子家語王肅後序
に云ふ、孔子の
父叔梁■、子伯
魚、孫子息皆妻
毎出だす。

七出。七去に
同じ。妻を去る
に七つの理由あ
り。即ち「不
父母去、無手
去、淫去、妬去、
有悪疾去、口
多言去、窃
去」と大戴礼に
見ゆ。

諸葛武侯。諸
葛亮、字は孔明、
蜀漢の劉備に仕
ふ、其の子劉禅、
後主と称す、時
に出師表あり。

死。洪水を
治めて成らず.
書経舜典に「鯀
を羽山にす」
とあり、押しこ
めて殺す。







。刃を腹に
刺し立てる。

























舜の父瞽、
弟象、皆悪人な
りしも、感化さ
れて、蒸々と進
み進みて.身な
治(乂)めて姦
悪に入らざりき。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その207/その209

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