人 ●なんぢ じゆ
六七 或、「女、君子の儒と為れ」の義を問ふ。曰
おのれ た
く、註に引く所の、程子曰く、君子の儒は己の為
めにし、小人の儒は人の為にするの説、既に解し
れい
得て了せり。而て己の為めにするとは、即ち明徳
を明かにするなり。明徳を明かにするは、即ち良
こゝろ
知を致して自から慊くするものなり。人の為めに
いたづら じつとく すなは
するとは、徒に人の知るを求めて実得なし、便ち
是れ良知を欺き、又た世を欺くものなり。故に儒
と雖も要するに小人に帰す。吾が輩千歳の下此の
●しようかん うるほ
語を読み、悚汗身を沾す。因つて子夏が聖師の此
語を聴く時、其の心何如なりしかを想像するに、
い
必ず身を容るる能はざるものの如くありしならん。
或問 「女為 君子儒 之義 、」曰、註所 引、
程子曰、君子儒為 己、小人儒為 人之説、既
解得了、而為 己者、即明 明徳 也、明 明徳 、
即致 良知 而自慊者也、為 人者、徒求 人知
而無 実得 、便是欺 良知 、又欺 世者也、故
雖 儒要帰 乎小人 矣、吾輩千歳下読 此語 、
悚汗沾 身、因想 歳子夏聴 聖師此語 時、其
心何如 必如 不 能 容 於身 者 矣、
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●論語薙也篇に、
「子、子夏に謂
うて曰く、女、
君子の儒となれ、
小人の儒となる
勿れ」とあり。
●悚汗。恐れ愧
ぢて汗にひたる。
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