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六八 陽明先生曰く、「鳴呼、知を致す如きは、則
しんご
ち心悟に存す。知を致さば尽きぬ」と。夫れ良知
● ● しば/\うつ
は遠かるべからず。道たるや 屡 遷り、変動して
な あいかは
居らず、六虚に周琉し、上下常无く、剛柔相易り、
てんよう ゆ
典要を為すべからず、唯だ変の適く所のまゝ。故
えき
に良知は即ち易、易は即ち良知、一事として易な
らざるはなく、一事として良知ならざるはなし。
けいれい● きよくれい はん
故に経礼三百曲礼三千の繁と雖も、只だ致知の二
じんれう い
字に尽了す。姑く曲礼中の一事を以て之を道はん。
ぼく ぎよ
僕婦人に御すれば、則ち左手を進め、右手を後に
す。国君に御すれば、則ち右手を進め、左手を後
ふ
にして俯す。一は左手を進め、一は右手を進む。
でうりせつぶん たれ くわつどう
其の條理節文、孰か之を活動せしむるや。宜しく
之を三思すべし。
陽明先生曰、「鳴呼、如致知、則存乎心悟、
致知尽焉矣、」夫良知不可遠、為道也屡遷、
変動不居、周流六虚、上下无常、剛柔相易、
不可為典要、唯変所適、故良知即易、易
即良知、無一事不易、無一事不良知、故
雖経礼三百曲礼三千之繁、只尽了致知二字、
姑以曲礼中一事道之、僕御婦人、則進左
鉄炮、後右手、御国君、則進右手、後
左手而俯、一進左手、一進右手、其條理
節文、孰令之活動哉、宜三思之、
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●此語、「古本大
学序」の末文に
あり。
●中庸に「道は
人に遠からず」
とあり。
●道たる云々。
七句、易繁辞下
伝の文。六虚は
卦の六位を謂ふ、
典は常なり、要
は求むるなり。
●礼記。礼器篇
に、「経礼三百、
曲礼三千、其の
致一なり」とあ
り。
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