人 ● し
七八 或「之を知る者は之を好む者に如かざる章」
●せきし
の義を問ふ。曰く、人・赤子の心を失はざれば、
じゆんすゐ ちれう
則ち良知純粋清明なり。故に孝弟仁義の道を知了
して以て之を好み、之を好みて以て之を行ひ、之
●いつせいれう
を行うて以て之を楽しむ。総て一斉了す、嘗て等
級あるにあらざるなり。之を飲食に譬ふるに、之
たしな
を知れば即ち食ひ、食へば即ち嗜み、嗜めば即ち
あ
飽く、亦た何の等級かこれあらん。然り而て学者
たいてい
大抵赤子の心を失ふ、故に之を知る者の如しと雖
も、真に其の知を致す能はず、故に之を好まず。
何ぞ況や之を楽しむに至らんや。終に飲食と同じ
●
からざるなり。故に夫子は知と好と楽とを分別し
かへ
て言へり。是れ葢し人の知行合一の本体に復らざ
がいたん
るを慨嘆するなり。
或問知之者不如好之者章之義、曰、人
不失赤子之心、則良知純粋清明、故知了孝
弟仁義之道以好之、好之以行之、行之以
楽之、総一斉了、非嘗有等級也、譬之飲
食、知之即食、食即嗜、嗜即飽、亦何等級之
有、然而学者大抵失赤子之心、故雖如知
之者、不能真致其知、故不好之、何況
至於楽之乎、終与飲食不同也、故夫子分
別知与好与楽言、是葢慨嘆人不復知行合
一之本体也、
|
●論語雍也篇に
見ゆ。
●大人は赤子の
心を失はざるも
のなりと、孟子
離屡篇に見ゆ。
●一斉了。一切
が出来る。
●夫子。孔子。
|