けい ●か
八〇 簗の恵王曰く、「寡人の国に於けるや、心を
えんのみい
尽す焉耳矣」と。其の焉耳矣の三字を観れば、則
ち恵王自ら以て十分其の善心を尽すと為せるの意、
れう ● ●や
瞭然として見るべし。孔子曰く、已んぬるかな、
せ
吾れ未だ能く其の過を見て、而て内に自から訟む
いひ
る者を見ざるなりと、恵王の謂なり。然れども人
かくき さ
に勝心客気あり、各々意見功詐を以て道と為す者
かれ
は、亦た是れ後世の恵王なり、豈独り他を笑ふべ
● せい がくよう ●しんどく
けんや。之を思へば則ち書の精一、学庸の慎独、
しゆゆ か
須萸も欠ぐべからざるなり。
簗恵王曰、「寡人之於 国也、尽 心焉耳矣、」
観 其焉耳矣三字 、則恵王自以為 十分尽 其善
心 之意、瞭然可 見矣、孔子曰、已矣乎、吾未
見 能見 其過 、而内自訟者 也、恵王之謂也、
然人有 勝心客気 、各以 意見功詐 為 道者、
亦是後世之恵王也、豈可 独矣 他哉、恩 之則
書之精一、学庸之慎独、不 可 須萸欠 也、
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●孟子梁恵王篇
に見ゆ。
●論語公冶長篇
に見ゆ。
●已んぬ云々。
もはや見込みな
からうかの意。
●書の精一云々。
書経大禹謨に
「惟れ精、惟れ
一、允に厥の中
を執れ」とあり。
●慎独云々。大
学の小人間居云
云の終りに、
「故に君子必ず
其の独を慎し
む」とあり、中
庸の始めにも同
じ文あり。
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