●ぶんちうし ● ちう た
八五 文中子曰く、「天地の中は、他にあらざるな
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り、人なりと。仁を問ふ。曰く、五常の始めなり
もと
と。性を問ふ。曰く、五常の本なりと。道を問ふ。
おも
曰く、五常一なり」と。吾れ惟ふ、天地の中は即
ふ
ち太虚の徳なり、之を人の方寸の心に付す。而て
ふく
方寸の心は太虚の徳を含む。故に曰く、天地の中
じつけん
は他にあらざるなり、人なりと。此れ乃ち実見の
言にして、而て仁なり性なり道なり、名を異にす
と雖も、要するに皆其の徳のみ。故に人天地の中
なん
を全うせんと欲すれば、則ち亦た奚ぞ他に求めん
● したが
や。只だ其の良知を致し、性に率うて以て道を行
へば、則ち仁熟し、而て心太虚に帰せん。学者此
に至らば亦た聖なるか。
文中子曰、「天地之中、非他也、人也、問仁、
曰、五常之始也、問性、曰、五常之本也、問
道、曰、五常一也、」吾惟天地之中、即太虚之
徳也、付之人方寸之心、而方寸之心含乎太
虚之徳焉、故曰、天地之中非他也、人也、此
乃実見之言、而仁也、性也、道也、雖異名、
要皆其徳已矣、故人欲全天地之中、則亦奚
他求哉、只到其良知、率性以行道則仁熟、
而心帰乎太虚矣、学者至此亦聖乎、
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●文中子。随の
大儒、王通、文
中子と称す、其
の著も亦た文中
子と題す。
●天地の中、中
は天地の理体を
指す。
●五常。仁義礼
智信。
●中庸の初めに
「性に率う之を
道と謂ふ」とあ
り。
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