山田準『洗心洞箚記』(本文)245 Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.11.20

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『洗心洞箚記』 (本文)

その245

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

下 巻訳者註

九七 大程子曰く、「心を尽し性を知るは、知の至  りなり。知の至りは、則ち心は即ち性、性は即ち  天、天は即ち性、性は即ち心なり。天を生み地を       くわいく  生み万物を化育する所以なり。其の次は則ち心を  存し性を養ひ、以て天に事ふ」と。謹みて按ずる                  に、程子の此説は、葢し孟子の尽心の章を解する  なり。夫れ心を尽し性を知り、而て天を生み地を  生み万物を化育するに至るは、則ち聖人の事にし  て、而て決して学者分上の事にあらざること、断                         じて知るべし。然れども朱註は尽心首章を以て下  がく         ことうけう       しよ  学に属す、故に陽明子顧東橋に答ふる書に、之を  べん       しうしつ         ていご  弁ずること周悉なり。固より朱註と牴牾す。朱註       そ ご          おくだん  又た程説と齟齬す。吾が輩其の是非を臆断する能  はずと雖も、然れども程説を以て主となさば、則  ち陽明子の説は、即ち程説に本づいて、而て特に    敷衍せるのみ。其の創説にあらざるなり。此等の  処、学問の大緊要なり。故に吾が党の学人、朱註  の外別に程説あるを知らざるべからざるなり。故               かく  に程説を挙げて之を説くこと此の如し。   大程子曰、「尽心知性、知之至也、知之至、   即心即性、性即天、天即性、性即心、所以生   天生地化育万物、其次則存心養性、以事   天」、謹按、程子此説、葢解孟子尽心章也、   夫尽心知性、而至於生天生地化育万物、   則聖人之事、而決非学者分上之事、断可知   矣、然朱註以尽心首章下学、故陽明子   答顧東橋書、弁之周悉矣、固与朱註牴牾、   朱註又与程説齟齬、吾輩雖断其是   非也、然以程説主、則陽明子之説本程   説、而特敷衍焉耳、非其創説也、此等処、   学問大緊要也、故吾党之学人、不朱   註之外、別有程説也、故学程説之如此、













孟子七篇の最
後に尽心篇あり、
其の首章の尽心
等につき、朱子
と王子との解釈
は全く離反す、


下学。初学の
修行。

此の書伝習録
中巻に載る。

齟齬。歯が喰
ひちがふことに
て、所説など合
致せぬ意に用ふ。


敷衍。引きの
ばして、詳しく
註釈すること。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その244/その246

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