● しきとく これ
一〇二 小程子曰く、「学者仁礼を識得し、実に諸
おのれ ● さいばい けいぎ
を己に得んには、只だ義理栽培を要す。経義を求
むる如きも、皆栽培の意なり」と。又た曰く、
「学者全く此の心を体せば、学未だ尽さずと雖も、
ごと ●ぶんげん
事物の来る若き、応ぜざるべからず。但だ分限に
あた
随つて之に応ずれば、中らずと雖も遠からず」と。
又た曰く、「書を以て道を伝ふると、口づから相
●はなは あひかん
伝ふるとは、だ相干せず。相見て言ひ、事に因
つて発明せば、則ち意志を并せて一時に伝へ了る。
つく
書は言多しと雖も、其の実尽さず」と。又た曰く、
つく ●げい
「世に書を読み文を為るを以て芸と為す者あり。
文を為る之を芸と謂ふも猶これ可なり。書を読み
●これ あさ
之を芸と謂ふ。則ち諸を書に求むるもの浅し」と。
みづ これ
此の数語、自から程朱を学ぶと謂ひて、而て諸を
しよさく ●ちやうしん
書策に求めて、吾が心に求めざる者の長鍼なり。
小程子曰、「学者識得仁礼、実得諸己、只
要義理栽培、如求経義、皆栽培之意、」
又曰、「学者全体此心学雖未尽、若事物
之来、不可不応、但随分限応之、雖不
中不遠矣、」又曰、「以書伝道、与口相伝、
不相干、相見而言、因事而発明、則并意
志一時伝了、書雖言多、其実不尽、」又曰、
「世有以読書為文為芸者、為文謂之芸
猶之可也、読書謂之芸、則求諸書者浅矣、」
此数語、自謂学程朱、而求諸書策、不求
吾心者之長鍼也、
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●この語、程伊
川の識仁篇に出
づ。
●義理を我が心
に植ゑつける。
経書を読むも、
義理を我心に植
ゑつけるためで
ある。
●分限。力量修
養の分限、程度。
●。殺の俗字、
甚しと読む。
●芸。論語に「芸
に游ぶ」とある
芸なり。
●読書は義理を
我に栽培すべし、
芸術視するは俗
学浅見なり。
●長鍼。長い針、
大なる誠。
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