こくう
一〇七 張子曰く、「虚空は即ち気なることを知れ
ば、則ち有無・隠顕・神化・性命一に通じて二無
し。聚散・出入・形不形を顧み、能く従つて来る
●
所を推本すれば、則ち易に深きものなり」と。又
●ばうしや ほゞ
た曰く、「 者は略虚空を体して性と為すことを
知るも、天道に本づいて用と為すことを知らず」
●いんうんそくすゐ
と。謹んで按ずるに、太虚の 息吹は気なり、
此の気は千変万化の根本となるなり。然らば太虚
を除けば則ち気なし、故に気を外にすれば則ち太
虚なきこと亦た知るべし。要するに虚と気とは不
●
二のものなり。真に其の不二を知らば、則ち有も
後にあらず、無も先にあらず、隠も体にあらず、
顕も用にあらず、神も幽にあらず、化も跡にあら
ず、性も人にあらず、命も天にあらず、是れ乃ち
● ●
心解なり。然らば則ち聚散・出入・形不形は皆其
な
の事なり、又た爰んぞ疑はん。故に曰く、易に深
か ●
きものなりと。夫の二氏の如きは、却て斯の義を
ほゞ
知らず。故に略虚空を体して性と為すことを知る
したが
と雖も、未だ嘗て仁義礼智の性に率うて以て行ふ
者あらざるなり。而て其の仁義礼智は他にあらず、
即ち春夏秋冬なり。春夏秋冬は即ち天道なり。鳴
●
呼、聖人の道は、体を明らかにし用に適すとは、
此を以てなり。
張子曰、「知 虚空即気 則有無隠顕、神化性命、
通 一無 二、顧 聚散出入形不形 、能推 本所
従来 、則深 於易 者也、」又曰、「 者略知
体 虚空 為 性、不 知 本 天道 為 用、」謹
按、太虚之 息吹者気也、此気為 千変万化
之根木 也、然除 太虚 則無 気、故外 気則無
太虚 亦可 知矣、要虚与 気不二者也、真知 其
不二 、則有非 後、無非 先、隠非 体、顕非
用、神非 幽、化非 跡、性非 人、命非 天是乃
心解矣、然別聚散出入形不形、皆其事也、又爰
疑、故曰、深 於易 者、如 夫二氏 、却不 知
斯義 故雖 略知 体 虚空 為 性、未 嘗有
率 仁義礼智之性 以行焉者 也、而其仁義礼智、
非 他、即春夏秋冬也、春夏秋冬、即天道也、
鳴呼、聖人之道、明 体適 用、以 此也、
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●易。易理。
● 者。 者。
● 息吹。易
に謂ふ 、荘
子に謂ふ息吹、
後項に出づ。
●有無も隠顕も
神幽も性命も皆
渾一不二といふ
なり。
●心解。心悟的
解釈。
●太虚の事なり。
●二氏。老子と
仏教。
●体は虚に当り、
用は気に当る。
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