●あうぜん しようかう
一〇八 張子曰く、「気は太虚に 然として、昇降
しそく ●いんうん
飛揚し、未だ嘗て止息せず。易に謂はゆる 、
● いき や ば
荘生の謂はゆる生物の息を以て野馬を相吹くもの
なり。此れ虚実動静の機、陰陽剛柔の始めにして、
せい くだ だく
浮んで上る者は陽の清、降つて下るものは陰の濁
なり。其の感遇聚散、風雨となり、霜雪となり、
● りうけい ゆうけつ●さうはくわいじん
万品の流形、山川の融結、糟粕 燼も教にあらざ
るなきなり」と。謹んで按ずるに、此の章太虚二
気の変化を論じて、而て人に及ばざるなり。然れ
ども人此の理を体せば、則ち吾が方寸は便ち是れ
こ
這の太虚にして、而て其虚実動静陰陽剛柔は、皆
亦た此れより活出す。其の天に在るの風雨は、吾
がうれいおんたく
れに在つては則ち号令恩沢なり。天に在るの霜雪
けいりく
は、吾れに在つては則ち已むを得ざるの刑戮なり。
●きよくらい だいそく
糟粕 燼も教にあらざるなきは、則ち曲礼・内則・
せうぎ どうさ ゐ ぎ
少儀の動作威儀、一として仁ならざるなきなり。
よ
故に張子の礼を以て人に教ゆる、従つて来る所あ
り。仏老の空虚と異なる所、全く此に在るなり。
張子曰、「気 然太虚 、昇降飛揚、未 嘗止
息 、易所 謂 、荘生所 謂生物以 息相 吹
野馬 者也、此虚実動静之機、陰陽剛柔之始、
浮而上者陽之清、降而下者、陰之濁、其感遇聚
散、為 風雨 、為 霜雪 、万品之流形、山川之
融結、糟粕 燼、無 非 教也、」謹按、此章論
太虚二気之変化 而不 及 人也、然人体 此理 、
則吾方寸便是這太虚、而其虚実動静陰陽剛柔皆
亦自 此活出焉、其在 天之風雨、在 吾則号令
恩沢也、在 天之霜雪、在 吾則不 得 已之刑戮
也、糟粕 燼無 非 教、則曲礼内則少儀之動作
威儀、無 一不 仁、故張子以 礼教 人、有 所
従来 矣、与 仏老空虚 所 異、全在 此也、
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● 然。盛ん。
● 。凝集の
意、易の繋辞下
伝に「天地 、
万物化醇」とあ
り。
●野馬は水辺の
蒸気「かげろふ」
なり、荘子に野
馬とか塵埃とか
は、生物が息
(いき)を以て
相吹いたもの、
と言へり。
●万品云々。万
物が形を流(布)
きてそれ/\物
とあらはれ、山
川が山と結び川
と融ける。
●糟粕 燼。物
のかす(滓)や、
燃え残りのやう
な、つまらない
もの。
●曲礼も内則も
少儀も礼記の篇
名なり。
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