● こ り
一二三 朱子曰く、「太極は只だ是れ一箇の理の字」
あん
と。謹んで按ずるに、朱子は理の字を以て太極を
くん
訓ず、吾人甚だ解し易し。是れ陽明先生の謂はゆ
●
る、文義を解き得て明当の処、如何ぞ一字を動か
そ ●けいじじやう ●
し得んといへるものなり。夫れ理は形而上、声臭
なきものにして、而て謂はゆる太虚なり。太虚は
げんかうりてい
空にあらず、是れ乃ち元亨利貞春秋冬夏を合せて
一にせる所以のもの、即ち是れ太極なり。末学若
● ●
し只だ理は実也の説を読みて、誤つて理を以て実
形あるものと為さば、則ち大惑なり。但だ己を誤
るのみにあらず、大に人を誤る、知らざるべから
ざるなり。
朱子曰、「太極只是一箇理字、」謹按、朱子以
理字訓太極吾人易甚解、是陽明先生所謂
文義解得明当処、如何動得一字者也、夫理
形而上無声臭者、而所謂太虚也、太虚非空、
是乃所以合元亨利貞春秋冬夏而一焉者、即
是太極也末学若只読理実也之説、誤以理為
有実形者則大惑也、非但誤己、大誤人、
不可不知也、
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●太極。易の繋
辞伝に「易に太
極あり」といふ、
漢以来多く気を
以て太極を解す、
朱子は理を以て
之を解す。
●伝習録に出づ。
●形而上。形而
下に対して云ふ、
無形の義理、道
等は是なり、易
の繋辞伝に、
「形而上は之を
道といふ」とあ
り。
●声臭。詩経に
「上天の載(こ
と)は声もなし
臭もなし」とあ
り、因て天理天
道を無声無臭と
いふ。
●理は実。朱子の
語。
●実形。実形あ
れば形而下とな
る。
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