●じやうしよ おく ● そむ
五一 穣苴期に後れし寵臣を斬り、孫武約に背ける愛
姫を斬る。世此れを以て二子の創意と為す。決して
●
二子の創意にあらざるなり。周官大司馬の法より来
ぢん せい
る、曰く、羣吏誓ひを陳前に聴く、牲を斬つて以て
ぢん とな
左右陳に徇へて曰く、命を用ひざる者は之を斬らん
●ち
と。又た曰く、致に及び大常を建て、軍衆を此し、
後れ至る者を誅せんと。二子は真に斯の事を行へる
のみ。春秋戦国問の名将は、皆成周の軍制に明かな
●はうゑつ
り、特に二子のみにあらざるなり。然れども彭越が
最も後れし者一人を誅せるは、此れ則ち必ず二子の
●ひそ なら
顰みに傚へるものか。
穣苴斬後期寵臣、孫武斬背約愛姫、世以此
為二子之創意焉、決非二子之創意也、自周官
大司馬之法来、曰羣吏聴誓于陳前、斬牲以左右
徇陳曰、不用命者斬之、又曰、及致建大常、
比軍衆、誅後至者、二子真行斯事焉耳、春秋
戦国間之名将、皆明於成周軍制、非特二子也、
然彭越誅最後者一人、此則必傚二子之顰者歟、
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●穣苴。司馬穣
苴、戦国時代の
名将、其の事史
記に見ゆ。
●孫武。孫子十
三篇の著者呉王
の為めに戦法を
講す、其の事史
記に見ゆ。
●周官。周礼夏
官の條。
●致云々。致は
軍衆を聚むるこ
と、大常は旗、
比は隊伍を調へ
ること。
●彭越。清初の
将軍。
●醜婦が西施の
眉をしかめたる
をまねたる故事、
荘子に見ゆ。
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